外資参入は緩和される方向へ(2013.11.10改訂)

11月7日付コンパス紙によると、インドネシア政府は12月末までに投資ネガティブリストの改訂を終える予定。従来の予定より数カ月遅れとなっており、外資参入条件の緩和を目指す経済調整大臣府と各省庁との間で、調整に手間取っている様子がうかがえる。

ネガティブリスト改訂に当たっての原則は以下4点とのことである。すなわち、

(1) 目的は投資促進。
(2) 改訂前より制限的なものにしない。
(3) 1つの分野は1省庁による規定とする(複数省庁にまたがるのを避ける)。
(4) 零細中小企業分野、農業分野は国内向け保護対象として確保。

まだ議論の最中でファイナルではないが、現段階で、以下のような外資規制緩和を計画していることが明らかにされている。

(1) 空港管理運営、港湾管理運営、空港サービス管理運営は100%外資可能(資産ではなく、管理運営のみ)。
(2) 陸運旅客・貨物ターミナル管理・運営は49%まで外資可能(以前は外資参入不可)。
(3) 自然を生かした観光事業の外資比率は49%までから70%までへ。
(4) 被覆付通信業の外資比率は49%までから65%までへ。
(5) 製薬業の外資比率は75%までから85%までへ。

<投資調整庁長官発言>(2013.11.09 追加)
・水産業の外資比率は30%まで
・広告業の外資比率は51%まで(ASEAN企業優先)
・ベンチャーキャピタルなど金融業への外資参入規制緩和
・自動車状態点検業への外資参入規制緩和
・映画配給業、病院業への外資参入規制緩和
(出所)Bisnis Indonesiaより

(2013.11.10 追加)
・映画配給業は外資比率は49%まで。

これらの外資緩和の背景として、政府は、単にインドネシア国内市場だけを目的に来る投資ではなく、インドネシアを生産拠点として、海外へ輸出するための投資を歓迎するとの意向を示している。

一方、同じ記事の中で、銀行業や農園業における外資の支配が高まっているとの警告も発している。今回の外資規制緩和が明確な産業発展戦略に基づいて議論されているものなのかどうか、という疑問も呈している。

筆者としては、上記の議論の方向が国際収支改善・マクロ経済安定との接点を意識したものであり、必ずしも場当たり的なものではないとの印象を受ける。とくに、外資に対して、経済ナショナリズムの風潮が高まる印象を与えないように気を使っている点が注目される。

とはいえ、来年の総選挙・大統領選挙を控えて、人気取りのために、経済ナショナリズム意識の高揚を図ろうとする動きは出てくることになろう。インドネシアは、ここにきて急速に自信を持ち始めている。もう自分たちでできる、という過信さえ首をもたげ始めている。

ただし、以前と違うのは、それをイデオロギー的に進めようとしても、自分の本当の実力を省みる冷静さも持ち合わせていることである。外国支配、という意識の裏に、被植民地意識の根強さを感じる。外資もまた、「インドネシアを支配するのではない」というアピールをもっとするために、現場で現実にインドネシア人・社会との接点をもっともっと持ち、インドネシアでインドネシアのためになる、という姿勢を見せていく必要があると考える。

 

3 comments

  • チカランの轟です。いつもお世話になってます。

    上記ネガティブリスト改定案には映画配給興業もあったはずですが、報道後にキャンセルになったのでしょうか?

    仮に映画産業への外資参入が認められれば、韓国のロッテが進出することは確実で韓国映画がもっと上映されることになるでしょうね。映画ファンとしては見れる作品の幅が広がるので単純に嬉しいです。

    金融業や農業への外資規制は必要であればおこなえばいいだけで、今回のリスト改定とはべつものと私は考えてます。経済ナショナリズムがいまだに根強いのが経済政策の特徴と捉えてますが、80年代や90年代と比較すればやはり変化してきているのでしょうか。この点、もう少し具体的に教えていただければ幸いです。

  • 轟さん、コメントをありがとうございます。

    映画配給も入っているようですが、コンパスの記事には載っていなかったと思います。パーセンテージについては未確認です。

    経済ナショナリズムですが、経済成長で自信をつけた自分たちが主役になる、しかしそれは外資を排除せずにうまく活用して、というニュアンスかと思います。その辺の感覚は、省庁ごとに温度差がかなりありそうです。労働省は外国人専門家向けのビザ発給をより制限する方向ですし。2015年のASEAN経済自由化までにインドネシアもキャッチアップしなければならない、という焦りの表れとみています。

    • 記事の追加とコメント返信、有難うございます。

      私が読んだのはジャカルタポストでしたが、投資調整庁長官発言はチェックしてませんでした。あとは速やかな実行を待ちたいところですね。

      各省庁によって経済ナショナリズムの温度差があるというのはなるほどと思いました。そのための経済調整担当省/大臣のはずですが、どの程度「調整」しているのか、報道からは正直よくわからないです。

      2015年のアセアン経済自由化は果たして予定通り実施されるのでしょうか?インドネシアの産業競争力の現状を考えると半信半疑ではあります。

      今後もコメントさせていただきますのでよろしくお願いします。

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