【インドネシア政経ウォッチ】第6回 コメ中心主義からの転換(2012年 9月 6日)

世界的に食糧危機が懸念される中、今年はインドネシアにおける農作物の生産が好調だ。7月発表の中央統計庁の統計によると、通年でコメの生産量(もみ米ベース)は前年実績比4.3%増の6,859万トンと予想されている。

昨年は住宅や工場用地への転換などで水田耕作面積が前年比で3%減少したこともあり、前年比で1.7%減少した。しかし、前年と耕作面積が変わらない2012年は、ジャワ島でコメの生産性が4.5%増と大幅に上昇したほか、ジャワ島以外での耕作面積も3.3%増える見通しなど明るい材料が多い。

ここ数年減産が続いていたトウモロコシも、耕作面積の拡大と生産性の向上により、今年は前年比7.4%増の1,895万トンになることが見込まれている。一方で減産が予想される主要作物は大豆くらいだ。

生産量が増えている農産物だが、中長期的な食料安全保障の観点からみると懸念事項が残る。特に1人当りの年間消費量が139キログラムで、日本の2倍以上と多いコメがそうだ。

1950年の主食に占めるコメの比率は5割程度だったが、「緑の革命」によるコメの増産を経て2010年には95%に上昇した。コメを食べることが「文明化」と同一視され、コメ以外食べなくなったのである。

政府は状況を打開するため、コメ生産量の大幅な増加に加え、コメ以外の食糧へと生産を多角化する方向性を打ち出した。消費量を7.5%下げれば、世界最大のコメ輸出国になれるという民間の試算もある。

昨今の現地でのグルメ・ブームは、ローカル食の再評価を促している。生活に余裕が生まれ、食に対する国民の関心が増えた今こそ、コメなど炭水化物中心の生活から脱却し、食文化をより豊かにする好機である。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20120906idr023A

※この記事は、アジア経済ビジネス情報を発信するNNA(株式会社エヌ・エヌ・エー)の許可を得て掲載しております。

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