【インドネシア政経ウォッチ】第7回 警戒すべき経常収支の赤字増大(2012年 9月 13日)

インドネシア経済に、おぼろげながら黄信号が灯り始めたかもしれない。黒字基調だった経常収支が2011年第4四半期(10~12月)から赤字へ転換し、赤字幅は今年第2四半期(4~6月)に69.4億ドルに拡大した。経常収支の対国内総生産(GDP)比も政府目標の2%を上回る3%超となり、公的対外債務比率も久々に30%を超えた。一方で、資本収支の黒字は、直接投資と証券投資の流入で急増し、経常収支の赤字を補てんしている。

輸出減少と輸入増加が、経常収支が赤字に陥っている原因である。輸出では石炭、ゴムなど主要コモディティ価格が低下して生産・輸出とも大きく減少し、繊維・化学製品の輸出も落ち込んだ。国別では中国向けを除いて軒並み減少し、特にシンガポール向けの落ち込みが目立つ。これに対して輸入は、機械類や電機など資本財の輸入増が著しく、国別でも日本や中国からの輸入が急増した。まさに、直接投資がそれに必要な機械などの資本財輸入を誘発している。

実は1980年代半ば~1990年代初期のインドネシアも、同様に大幅な経常収支の赤字に悩んでいた。ただ当時は、金融政策で切り下げた通貨ルピアを武器に、低賃金・労働集約製品の輸出振興を図り、外国から輸出向けの直接投資を呼び込む戦略をとった。

しかし、現在インドネシアに流入する直接投資の多くは、消費ブームに沸く国内市場を標的とし、輸出への貢献は期待できない。労働コストも年々上昇しており、低賃金・労働集約製品の優位性もなくなってきている。また、コモディティ以外に競争力のある輸出品は極めて限定的である。

政府は製造業向けの投資が工業化に果たす役割に期待するが、経常収支の赤字はしばらく続く見通しだ。それにどこまで耐えられるのか。輸入増は外貨準備を減少させ、通貨ルピアへの信頼を低下させる。米ドル買いなどの投機的な動きが海外への資本逃避を誘発すれば、国内市場は一気に冷え込む可能性もある。1990年代後半の通貨危機の経験を踏まえ、慎重に動向を見極める必要がある。

 

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