【インドネシア政経ウォッチ】第8回 出張旅費の不正支出問題(2012年 9月 20日)

インドネシア語の日刊紙『コンパス』で先週、公務員の出張旅費がやり玉に挙がっていた。2013年度予算案では、国家歳出総額1,658兆ルピア(約14兆円)に対して出張旅費が21兆ルピアだった。額と歳出比率自体は、日本と比べても法外に高いわけではないが、5年前の9兆1,000億ルピアから12年には18兆ルピアへと倍増。来年はさらに3兆ルピアが上乗せされたため、国民も黙っていないようだ。

出張旅費では不正支出のほうが大きな問題となる。会計検査院の報告によると、11年の不正支出の比率は約4割に上り、その額は8,600万人を対象とする庶民向けの社会保険(Jamkesmas)の支出額である7兆3,000億ルピアを上回る。筆者自身もかつて地方政府でカラ出張が恒常化していたのを目撃したことがある。セミナーなどで主催者から旅費が出ているにもかかわらず、職場にも出張旅費を請求して二重取りしているケースも見かけた。

しかし数年前から、汚職撲滅委員会(KPK)が贈収賄疑惑を連日追いかけ、会計検査院も全国の省庁・地方政府の予算に至るまで監視を強めている。そのせいか出張旅費の取り扱いが厳しくなり、会計検査で不正支出とみなされるのを警戒する姿勢が強まった。コンパスによると、スラバヤ市は「これまで各自が行っていた航空券の手配などを総務局で一括する」と市長が発表した。少しずつだが、使途の透明性が確保される兆しがある。

スハルト政権の崩壊後、中央政府も地方政府も自前予算で海外や他の地方を視察し、学習したり情報を得たりする活動が増えた。その結果、画一的でない、新しいアイディアや方法論が政策のなかで試されるようになったのは喜ばしい。しかし、出張に家族を同伴させ、用務より買い物に精を出す傾向はまだ見受けられる。出張者に詳細な出張報告・会計支出報告を義務化し、一般公開でもしないと国民の批判は収まらないだろう。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20120920idr019A

※この記事は、アジア経済ビジネス情報を発信するNNA(株式会社エヌ・エヌ・エー)の許可を得て掲載しております。

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