【インドネシア政経ウォッチ】第14回 HasmiとHASMI(2012年 11月 1日)

国家警察テロ対策部隊(Densus 88)は10月26日から27日にかけて、ジャカルタ、西ジャワ州ボゴール、東ジャワ州マディウン、中ジャワ州ソロの4都市でテロ容疑者11人を逮捕した。米国大使館、オーストラリア大使館前のプラザ89ビル、中ジャワ州スマランの警察機動隊本部前、東ジャワ州スラバヤの米国総領事館などを標的としたテロを計画していたとの容疑からだ。同時に、爆弾製造の材料や爆発物なども押収した。

警察によると、彼らはハスミ(Hasmi)と呼ばれる新たなテロリスト・グループのメンバーで、中スラウェシ州ポソでの警察官殺害や爆弾事件にもかかわっている。逮捕されたアブ・ハニファ(26歳)はリーダーで、ポソでテロリスト訓練を受けたといわれている。ポソからソロへ戻った後、近隣住民に弓矢や剣のほか、火器の使い方も教えていた。中ジャワやジョクジャカルタ特別州の急進イスラーム組織ラスカル・ヒスバとの強い関係を指摘する評論家もいる。

ところが、すぐに同名の組織がテロリストとの関係を否定し、警察に抗議する声明が出された。この声明を出したハスミ(HASMI)は、Harakah Suniyyah untuk Masyarakat Islamiという組織で前述のHasmiとは別組織。「逮捕された11人は会員ではない」「暴力を否定する」と訴えた。HASMIは、初期イスラーム(サラフ)への回帰を掲げるサラフィー主義の団体で、2004年に社会団体として政府に正式登録されている。厳格なイスラームを希求するが、政治には消極的・保守的とみられている。

警察は結局、HASMIがHasmiと別組織であることを認めるとともに、Hasmiのような新グループが容易に形成される可能性にも言及した。アブ・ハニファはジュマア・イスラミアの信奉者とされるが、Hasmiのメンバーとポソ・グループとは直接の関係はないという見方もある。彼らのネットワークのより詳細な解明が待たれる。

一方で暴力を否定するといっても、HASMIは急進イスラーム組織と思想的に共通する部分があるため、警察が大きな関心を持っていることは想像に難くない。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20121101idr021A

※この記事は、アジア経済ビジネス情報を発信するNNA(株式会社エヌ・エヌ・エー)の許可を得て掲載しております。

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