【インドネシア政経ウォッチ】第15回 外部委託規制、標的は悪質業者(2012年 11月 8日)

11月2日といわれていたアウトソーシング(外部委託)に関する新たな労働・移住大臣令の発布は、同月半ばに延期された。焦点は、派遣労働を清掃、警備、配膳、運転手、石油ガスの5種に限定することにある。

労働法(法律2003年第13号)第66条では、5種は単に例として挙げられたにすぎないため、インドネシア経営者協会(APINDO)は限定を不当として憲法裁判所に訴える構えをみせている。しかし、労働・移住省は、同法第65条に「大臣権限で条件などの変更可」とあるため不当ではないと反論する。

金属労連(FSPMI)などの労働組合は、派遣労働者の正規労働者化を求めて横暴なデモや示威行為を繰り返しているが、労働者を派遣するアウトソーシング業者のことは、あまりメディアで取り上げられていない。アウトソーシング企業協会(ABADI)の加盟企業は約200社だが、実際には1万社以上が当該業務に携わっているといわれる。村長や地方政府が簡単に設立許可を発出したためで、労働・移住省も十分な監視が行えていない。ペーパーカンパニーまがいの業者も多いほか、同省関係者や警察などが絡んでいるケースもあるそうだ。

業者を通じれば、求職者は派遣労働者として登録することで職探しのコストを低減できる。厳しい競争にさらされる経営側も状況に応じて従業員数を柔軟に調整できる。その意味で、アウトソーシング制度は労働市場の需給調整を円滑にする面がある。ABADIの試算によると、アウトソーシングを5種に限定すると、新たに1万以上の失業者が発生する。

労働組合のアウトソーシング批判は、労働者をモノのように扱い、業者が彼らの賃金から不当にピンハネする点に向けられる。APINDOも悪質な業者を批判している。そうであれば、組合側と経営側は相互の対立をエスカレートさせるのではなく、むしろ一緒に悪質な業者の摘発と監視をすべきではないかと思うのだが。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20121108idr020A

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