【インドネシア政経ウォッチ】第29回 資金まみれのパプア州で州知事選挙(2013年 3月 7日)

パプア州選挙委員会は2月13日、先に行われた州知事選挙の結果、民主党推薦のルーカス・エネンベ(前プンチャック・ジャヤ県知事)=クレメン・ティナル(前ミミカ県知事)組が119万9657票(得票率52%)を獲得して当選、と発表した。

この州知事選挙自体、前職のバルナバス・スエブ州知事が過去に2回州知事を務めたことを理由に選挙委員会から立候補を取り消されるなど、紆余(うよ)曲折を経て、何度か延期された後で実施された。候補者の多くが現職県知事であるなか、人口の多い中央高地を抑え、資金力に勝るルーカス候補が最有力視されていた。

パプア州の開発政策では、点在する村々へ一定額の資金を配分する形態が採られる。とくに中央高地の村々へのアクセス手段が限られているため、バラまき型にせざるを得ない面もある。各村には州からの10億ルピアに加えて、県からさらに10億~30億ルピアの資金が投下される。これらの資金は、町中の銀行にある各村の銀行口座へ振り込まれ、村から定期的に町へ降りてきて資金を引き出す、という形を採る。

特別自治を行うパプア州は、中央政府から通常の地方交付金に加えて、特別自治交付金を受け取る。県や村が分立して数が増えたため、その額は毎年増加している。その意味でパプアは決して貧しくない。村レベルへ配分される資金も、村人にとっては見当もつかないような額である。果たしてこれらの資金はどのように使われているのか。いや、そもそも、こうした資金の存在を村人は知っているのだろうか。

州知事選挙の結果発表後、2月21日にパプア州内2カ所で、民間武装勢力が軍施設を急襲し、8人の軍人と4人の民間人が死亡した。当選したルーカス候補のお膝元プンチャック・ジャヤ県で起きたため、選挙結果への不満が原因との見方もある。パプアではこうした暴力事件が後を絶たないが、「パプア独立」といったイデオロギーよりも、むしろ、どろどろしたカネの話が背景に絡んでいる可能性が高い。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20130307idr020A

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