【インドネシア政経ウォッチ】第30回 軍人が警察署を襲撃(2013年 3月 14日)

3月7日、南スマトラ州オガン・コメリン・ウル県で、陸軍砲兵部隊に所属する75人の軍人が同県の警察本署を襲い、建物を焼失させた。軍人らは、さらに他の警察署も次々に襲撃していった。今回の軍人による警察への攻撃は、1月27日に砲兵部隊の軍人が交通警察に射殺されたことへの報復とされている。

軍人らは警察本署周辺の道路をあらかじめ封鎖し、車両の通行を止めてから襲撃を開始。事前に知らされていたためか、周辺にある学校は休校し、商店も早々と閉店していた。この襲撃によって、警察本暑に拘置されていた30人が逃走した。3月8日、国軍第2軍区シリワンギ師団のヌグロホ司令官は警察に対して謝罪し、「組織としての国軍と警察の間には何も対立はない」と強調した。

1998年5月のスハルト政権崩壊後、それまで国軍の一部だった警察は軍から切り離され、軍は国防、警察は治安を担うことになった。テロ対策やデモ対応も、今や警察の仕事である。独立か否かで揺れたアチェでも和平が実現し、かつてのような、国内紛争地域で業績を上げた軍人が出世する時代は終わった。地方軍区の数を増やしたり、国境警備の予算を手厚くしたりするのは、軍人の雇用機会確保という意味もある。爆弾テロ事件を契機に、ホテルやショッピングモールの警備員の数も増えた。軍人であることがもはやステータス・シンボルではなくなったのである。今回の軍による警察への襲撃事件の背景には、こうした軍人の将来への不安があったのではないかと想像する。

だが、実際は、もっと些細で感情的な話に過ぎないのかもしれない。以前、南スラウェシ州マカッサルにいた頃、陸軍戦略予備軍(Kostrad)の兵士と警察官が女性をめぐってトラブルになり、両者が自分の仲間を引き連れてきて一触即発の事態となったことがある。おそらく、これまでにも軍人と警察官の些細な喧嘩が、種族や宗教などのニュアンスを伴い、住民を巻き込んだ暴動へ発展したケースが少なからずあったに違いない。

 

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