【インドネシア政経ウォッチ】第34回 コパススのたそがれ(2013年 4月 11日)

陸軍参謀本部は4月4日、3月23日に起きたジョクジャカルタ特別州チュボンガン刑務所への武装勢力による襲撃事件は、陸軍特殊部隊(コパスス)の軍人による犯行だったと発表した。彼らの上官がジョクジャカルタ市内のカフェで残虐に殺害されたことへの報復として、犯人の収容されている刑務所を襲撃したのである。

識者の多くは、今回の無法な刑務所襲撃を「民主主義の危機」と厳しく批判した。しかし同時に、暴力を是認する「ならず者(プレマンと呼ばれる)主義」に対する批判も高まりを見せている。特に、政治家がプレマンを用心棒のように使い、政治の世界に暴力を持ち込んだことへの批判が強い。今回、コパススの上官もプレマンに殺害された。

もっとも、コパススも警察も、これまでプレマンを情報源としても活用してきた。だが、民主化の進展に伴う法治主義の徹底により、治安維持やテロ対策の役割が警察へ移され、コパススの活躍の場は限定的になった。それにより、コパススとプレマンとの関係も相対的に希薄になった。また、民主化で情報開示が進められ、コパススが過去に関わった闇の部分が明かされ始めると、精鋭部隊の輝きは大きく失われていった。

赤ベレーのコパススといえば陸軍の最精鋭エリート部隊である。歴代の陸軍幹部のほとんどはコパスス出身者だった。その任務は、ハイジャックや人質事件への高度な対応、テロ対策などが中心だったが、1980年代半ばの「ミステリアス・シューティング(ならず者一掃作戦)」や、1990年代後半の反政府活動家誘拐事件など、闇の作戦も担ってきた。

有力大統領候補の1人、グリンドラ党のプラボウォ党首はかつてコパスス司令官を務め、東ティモール、パプア、アチェなどでの工作活動を仕切った。1998年5月のジャカルタ暴動へのコパスス絡みでの関与も取り沙汰される人物である。コパススの負のイメージはプラボウォと密接につながる。コパススのたそがれは、プラボウォに対する間接的ダメージにもなる。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20130411idr021A

※これらの記事は、アジア経済ビジネス情報を発信するNNA(株式会社エヌ・エヌ・エー)の許可を得て掲載しております。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください