【インドネシア政経ウォッチ】第54回 国軍司令官の交代(2013年9月12日)

ユドヨノ大統領は8月30日、退役する国軍司令官アグス・スハルトノ空軍大将の後任にムルドコ陸軍参謀長を任命した。国軍幹部人事は、国会承認を得ることが義務付けられており、今回の人事も8月27日に国会承認を受けた。

国軍司令官ポストは、陸・海・空の参謀長が交代で就くのが慣例として10数年前から定着しており、今回、陸軍トップが国軍司令官となるのも順当な人事である。しかし、ムルドコが陸軍副参謀長から陸軍参謀長に就任したのが今年5月22日であり、陸軍参謀長を実質わずか3カ月務めての国軍司令官就任は、異例の速さと言える。

ムルドコ新国軍司令官は1957年、東ジャワ州クディリの貧しい家庭に生まれた。1981年に国軍士官学校を優秀な成績で卒業後、ジャヤ陸軍区(ジャカルタ)参謀長、陸軍戦略予備軍第1部隊司令官、タンジュンプラ陸軍区(西・中カリマンタン)司令官、シリワンギ陸軍区(西ジャワ)司令官、国軍防衛研修所(レムハナス)副所長、陸軍副参謀長などを歴任した。

先週号の週刊誌『テンポ』は、ムルドコ新国軍司令官の持つ資産について報じている。それによると、総資産額は321億8,522万3,702ルピア(約2億8,900万円)と45万米ドル(約4,500万円)であり、ユドヨノ大統領の76億1,600万ルピア(2009年)、前任のアグス・スハルトノ国軍司令官の37億ルピア(2010年)と比べても、破格に多い額である。ムルドコの説明では、建設労働者から成り上がった義父の所有するさまざまな土地の相続、公務で海外勤務した際の手当を貯めたもの、ということである。

かつて、インドネシア政治を分析する際には、国軍幹部人事を抑えるのが鉄則で、陸軍特殊部隊や陸軍戦略予備軍、および東ティモールなどでの野戦経験の有無、軍高官との上下関係・ネットワークなどを細かく見ていた。しかし、もはや軍の政治介入はなく、国軍幹部人事を分析する重要性は薄れてきた。メディアはむしろ汚職の匂いを嗅ぎ回っている。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20130912idr019A

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