【インドネシア政経ウォッチ】第59回 投資殺到のバンタエン県(2013年10月17日)

南スラウェシ州にバンタエンという名の県がある。面積395平方キロメートル、人口18万人という小さな県で、農業が主産業である。ジャカルタなどでは知られていないが、このバンタエン県に今、外国投資が殺到している。

10月のAPEC首脳会議に合わせて来訪した中国の習近平総書記とユドヨノ大統領との間で、さまざまな協力協定が締結されたが、そのひとつが、中国のYinyiグループによるバンタエン県のニッケルおよびステンレス精錬所への投資である。総額23兆ルピア(約2,000億円)で、300ヘクタールの工業用地に2015年から精錬所を建設する。Yinyiグループ以外にも、中国系2社を含む5社がニッケルやマンガンなどの精錬所への投資を計画している。

バンタエン県はニッケル鉱やマンガン鉱の産地ではない。しかし、南スラウェシ州北部から東南スラウェシ州北部にかけてニッケル鉱床があり、これまで主にブラジル系ヴァーレ・インドネシアや国営アネカ・タンバン(アンタム)が採掘し、日本向けに未精錬のまま輸出してきた。政府がインドネシア国内での加工を義務づける政策へ転換したことで、精錬所への投資が注目され、投資家は南スラウェシ州内で立地先を探していた。

バンタエン県が選好されるのは、県レベルでの投資許可がわずか1日で終了し、費用も無料だからである。電力も州都マカッサルに次ぐ37万キロワットを確保し、課題の港湾整備も急ピッチで進める予定である。約2万人の雇用機会が生まれることになる。

積極的な投資誘致は、ヌルディン県知事の功績である。九州大学で博士号を取得、日本語の堪能な実業家出身の彼は、日本との広い人的ネットワークを駆使し、日系の水産品・野菜加工工場を誘致し、すでに日本向けに輸出している。高品質の水と標高差を生かした農業で、低地では米作、高地では野菜、イチゴ、アラビカコーヒーなどの栽培を進めている。日本から中古消防車・救急車の受け入れも積極的に行ってきた。

地方でもやり方次第でいろいろできる。投資殺到のバンタエン県は、他の地方政府へのよい刺激となるはずである。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20131017idr019A

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