【インドネシア政経ウォッチ】第92回 元憲法裁長官に無期懲役判決(2014年7月10日)

ジャカルタ汚職裁判所は6月30日、地方首長選挙結果の最終判断に絡んで収賄を繰り返してきた元憲法裁判所長官のアキル・モフタル被告に対して、無期懲役の判決を下した。合わせて、100億ルピア(約8,700万円)の罰金を科し、国民としての権利である選挙権・被選挙権を剥奪した。

この判決はもちろん、これまでの汚職裁判での最高刑である。スハルト政権崩壊後の改革(レフォルマシ)の時代のなかで、司法改革の目玉となったのが違憲審査を行う憲法裁判所の新設であり、汚職撲滅委員会とともに国民から高い信頼を受けてきた機関であった。しかし、今回のこの汚職事件により、憲法裁判所への国民の信頼は地に落ちた。アキル被告への無期懲役の判決は、その信頼失墜の責任も負わされたものであった。

地方首長選挙の開票結果に不服がある場合、憲法裁判所に対して不服申立がなされ、憲法裁判所が審査したうえで判断を下す。そこでは、憲法裁判所の判断をチェックする機関はなく、憲法裁判所の判断がそのまま最終結果となる。アキル被告はこれを悪用し、申立者からの収賄を繰り返したのである。

今回の裁判でアキル被告が収賄を行ったと証明されたのは、バンテン州レバック県知事選挙、中カリマンタン州グヌンマス県知事選挙、東南スラウェシ州ブトン県知事選挙、東ジャワ州知事選挙、パプア州の4県知事選挙・1市長選挙など、合計14の地方首長選挙であり、収賄総額は572億8,000万ルピアと50万米ドル(計約5億5,000万円)に達する。

アキル被告は控訴する意向を示した。憲法裁判所は自浄努力を進め、国民の信頼回復に努めているが、本当にアキル被告一人の特殊ケースとして片付けられるのだろうか。

7月9日に大統領選挙の投票が行われた。僅差と言われた一騎打ちの今回、負けたとされた陣営が開票結果への不服申立を憲法裁判所へ持ち込む。その際に、果たして憲法裁判所は公正に判断できるのか。そこで再び贈収賄が行われない保証はどこにもない。