【インドネシア政経ウォッチ】第94回 民主主義は守られた(2014年7月24日)

インドネシア総選挙委員会(KPU)は7月22日、大統領選挙の開票確定結果を発表し、ジョコウィ=カラ組が7,099万7,833票で当選した。ここでの得票率53.15%は、7月9日の投票後に出された8社のクイックカウント結果とほぼ同じで、真偽の疑われたクイックカウントの信頼性が再確認された。

大統領選挙では、誹謗・中傷のネガティブキャンペーンもさることながら、投票集計表などの原データ自体を改ざん・捏造しようとする動きが執拗に見られた。それを防ぐため、KPUは全国に54万6,278カ所ある投票所の投票集計表を一つ一つスキャンし、ウェブサイトに掲載するという措置を採った。集計プロセスが信頼されていれば必要のない、日本では見たことのないやり方である。

そして、カワル・プミル(「総選挙を守る」の意味)という名の民間組織を通じて、約700人のボランティアがスキャンされた投票所単位の集計結果を入力し、カワル・プミルのサーバーに集約させた。ボランティアは国内だけでなく国外にも散らばり、カワル・プミルのフェイスブック・ページに登録した者のみがサーバーにアクセスできた。

すなわち、KPUの正式の開票・集計プロセス以外に、カワル・プミルが投票所レベルのデータを基にして独自に集計を行ったのである。これにより、KPUの開票・集計プロセスで原データの改ざん・捏造が起こらないようにチェックし、起こった場合でもどこで起こったかを追跡できる状況を作り出した。

実際、カワル・プミルのサーバーは、ハッカーから激しいサイバー攻撃を受けた。幸いにもサーバーは守られたが、そこまでしてデータの改ざんを画策した勢力がいたのは驚きである。改ざん・捏造されたデータが公式結果となっていたら、選挙だけでなくそれを実施した政府や国家への信頼が失墜したはずである。

カワル・プミルのボランティアたちの活躍でインドネシアの民主主義は守られた、と言ったら言い過ぎだろうか。でも、早くカワル・プミルが不要な状況になってほしいものである。

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