図書館舟、東インドネシア海域へ

今回の2015年マカッサル国際作家フェスティバル(MIWF2015)では、図書館舟(Perahu Pustaka)を披露することも注目点の一つだった。図書館舟には約5000冊の本を積んで、マカッサル海峡をはじめとする東インドネシア海域の離島をまわる、という構想である。

この構想自体は、4月頃に、友人たちがツイッター上で話し合ううちに思いついて、あっという間に実行に移されたものである。その基には、東ジャワ州で馬に本を積んで山奥の村々をまわる活動や、タイで船に本を積んで離島をまわる活動があった。

図書館舟には、パッティンガロアン(Pattingalloang)号という名前が付けられた。パッティンガロアンとは、17世紀に活躍したゴア王国(ゴア・テッロ)の首相で、いくつもの外国語を解し、様々な学問と知識を広めた人物とされている。今回のMIWF2015のテーマ「知識と普遍」(Knowledge and Universe)は、あまり知られていないパッティンガロアンの再評価も意図していた。

MIWF2015が終了した翌日の6月7日、図書館舟の管理者である友人のイワン氏に誘われ、図書館舟に乗ってみた。舟はスラウェシ島南西部のマンダール地方の伝統舟で、けっこう小さい。

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10人も乗れば窮屈な感じがする。その船倉に本棚を作って本を並べ、子供たちが中で本が読めるスペースを作る予定である。

イワン氏はジャーナリストで、西スラウェシ州の地方新聞社に籍を置いているが、この図書館舟を管理するにあたって、何日も洋上で離島をめぐるため、兼任は難しいと判断し、地方新聞社を退職した。収入もないなか、しばらくは図書館舟の管理・運営に全力を尽くすという。

私たちの乗った図書館舟は、マカッサルのロッテルダム要塞前からソンバオプ要塞近くまで、約1時間半航海した。マカッサルの新興住宅地タンジュン・ブンガと対岸のバロンボン地区を結ぶバロンボン橋の手前まで来て、舟は止まった。ソンバオプ要塞近くへ行くには、この橋をくぐらなければならない。しかし、このままでは通行できない。マストが高く、橋にかかってしまうのだ。ではどうするか。

断念するのかなと思っていたら、船員がやおらマストを切り始めた。そして、とうとうマストを切ってしまった。
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マストを切った図書館舟は、無事に橋の下を通過し、ソンバオプ要塞近くへと向かった。

マンダール地方の伝統舟は、甲板に穴を開けてマストの棒を船倉まで落とすため、高さの調整ができない。このため、今回のような場合には、マストを切るしか方法がないのである。そして、新しく木材を調達し、再びマストを作るのである。実際には、今回の件に懲りて、図書館舟のマストは、高さの調整ができるように改修するとのことであった。

ともかく、図書館舟は、間もなく、離島を回り始める。しかし、まだまだ本の数が足りない。対象が離島の子供たちであることから、マンガや絵本が好まれるということである。

パッティンガロアンの精神を受け継いで知識に触れる機会を離島の子供たちに提供する、という高邁な理想とはちょっと離れるかもしれないが、本に触れる経験の乏しい離島の子供たちに何らかの刺激を与えることにはなるだろう。それに挑戦しようというイワン氏の覚悟は尊敬に値する。

図書館舟の航海の様子は、特設ウェブサイトでお知らせするということで、楽しみである。

 

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