【スラバヤの風-18】スラバヤ動物園の悲劇

スラバヤ動物園で次々に動物が死んでいく、と話題になっている。2014年1月には、アフリカライオンが首を吊った不自然な形で死んでいるのが写真入りで報道された。「死の動物園」「世界最悪の動物園」と酷評されたスラバヤ動物園で、いったい何が起こっているのか。

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スラバヤ動物園の入口

スラバヤ動物園は、オランダ植民地時代の1916年に設立された国内最古の動物園であり、広さ15ヘクタールは東南アジア最大規模である。2014年1月末現在、197種、3459頭の動物が飼育されているが、84頭が病気や老齢で、うち44頭が危機的状態にある。

スラバヤ動物園で動物の死が問題視されたのは2010年頃からである。スマトラトラ、アフリカライオン、コモドオオトカゲ、バビルサなどが相次いで死んだが、飼育環境の悪化やエサの不足などの様々な問題は、現在まで、何ら解決には至っていない。

動物園を管轄する林業省の意向を受けて、スラバヤ動物園の管理運営はスラバヤ市政府へ移管されたため、批判の矛先はスラバヤ市のリスマ市長へも向けられている。しかし、市長は一切ひるまず、逆に、スラバヤ動物園の前経営者を汚職撲滅委員会へ告発するという行動に出た。地元の国立アイルランガ大学が監査を行った際、南京錠の付いた複数の金庫や現金入りの不審な袋が発見されたほか、スラバヤ動物園の動物を他の動物園と交換した際に、動物の代わりにバイクや自動車をもらっていたケースが発覚したのである。

スラバヤ動物園の管理運営をめぐっては、過去の歴代園長が率いる3グループの内部対立があり、ときには、特定グループの意向を受けた暴力団(隣のジョヨボヨ・バスターミナルを仕切る)が園内に入るケースさえあった。リスマ市長は、これら3グループを同じテーブルにつかせて、動物園の飼育環境や管理運営の改善に向けた話し合いを試みている。

スラバヤ市政府がスラバヤ動物園を管理運営することになったのは、実は動物園内部の問題だけではなかった。2011年頃、地元実業家が動物園を移転させ、元の敷地にホテルやレストランを建設する計画が浮上した際、それを断固認めさせたくないリスマ市長が、市政府による動物園の管理運営を強硬に主張したのである。 地元実業家は、動物園を移転させる口実として、動物の死が相次ぐ劣悪な飼育環境を利用したのかもしれない。2015年のスラバヤ市長選挙でリスマ市長の再選を阻むため、動物園事件絡みでの資金工作があるとの噂もある。スラバヤ動物園の悲劇には、どうしても人災の匂いが付きまとっている。

 

(2014年1月31日執筆)

 

 

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