【スラバヤの風-44】中国のスラウェシへの投資攻勢

中国はインドネシアへの投資よりも貿易を選好する。筆者はそんな印象を持っていたが、昨年後半から様相が変わり始めた。2014年第4四半期の中国からの投資額は5億ドルとなり、シンガポール、マレーシア、日本に次いで4番目、初めてトップ5に顔を出した。

とりわけ、スマトラ、カリマンタン、スラウェシといったジャワ島以外の地域への製錬、セメント、電力などインフラ関連投資が目立ち、投資調整庁は2015年には中国からの投資がさらに伸びると見ている。地方への投資分散を掲げるジョコウィ政権は大歓迎である。

2015年に中国からの大型投資が見込まれるのは、スラウェシ島である。まず、中国の徳龍ヴァーチュー・ニッケル公司は、東南スラウェシ州コナウェ県に50億米ドルを投じてニッケル製錬工場を建設する。第1期は年産60万トンだが、第2期で120万トン、第3期で120万トンを追加し、最終的に年産300万トン体制を目指す。

また、南スラウェシ州バンタエン県には、中国企業8社がニッケルやマンガンなどの製錬工場を各々建設する予定で、投資額の合計は40億米ドルになるものとみられる。スラウェシ島はニッケルの主産地であり、中国からのこれら巨大投資は、政府の未加工鉱石の輸出を禁止し、国内での製錬を奨励する政策に沿った動きである。

一方、2015年1月、北スラウェシ州政府は中国交通建設公司との間で、ビトゥン特別経済地域(KEK)開発に関するMOUを締結した。インドネシアのなかで地理的に最も東アジアに近いビトゥンは、国内外物流のハブ港としての役割を期待されるほか、州都マナドとを結ぶ高速道路建設、及びその沿線での工業団地開発が計画されている。ビトゥン特別経済地域に対する中国からの投資額は、インフラ、海洋、薬品など少なくとも3兆ルピア(約23万米ドル)が見込まれている。

中国はなぜスラウェシや東インドネシアを重視するのか。それは、南シナ海から南太平洋へ抜けるルートを確保するためである。実際、そのルートの先にある東ティモールでは、政府庁舎の建設などを中国が丸抱えで進めている。東インドネシアでのプレゼンスを高める同様の戦略は、韓国やロシアも採っていたが、中国が一歩先んじたようである。

とはいえ、中国からの投資がすべて順調なわけではない。西スラウェシ州では、スラウェシ島全体の電力需要を賄える規模の水力発電事業に中国が参入したが、ダム建設をめぐって地元住民の反対にあい、撤退を余儀なくされた。

日本はこれまで、人材育成などの経済協力をスラウェシや東インドネシアで地道に続けてきたが、日系企業の大半がジャワ島内のジャカルタ周辺に立地することもあり、中国に大きく遅れを取ってしまったことは否めない。

 

(2015年2月28日執筆)

 

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