【インドネシア政経ウォッチ】第101回 ジャワ島の水田が消えてゆく(2014年9月25日)

好況で投資ブームに沸くインドネシアは、人口ボーナスも続き、中長期的な成長可能性が大きいが、実はその陰で深刻な問題が露呈している。コメの供給問題である。

インドネシア人の主食は今、9割以上がコメである。1950年代頃は主食に占めるコメの比率が5割程度で、キャッサバ、トウモロコシ、サゴヤシでんぷん、イモなども主食の一角を占めていた。ところが、70年代のいわゆる「緑の革命」でコメの高収量品種が導入されて生産が急増したため、主食のコメへの転換が進んだ。その結果、インドネシアの食糧政策の基本はコメの自給・供給確保となった。

しかし、そのコメを作る水田面積が減り続けている。9月21日付コンパス紙によると、2006年から13年の7年間、毎年約4万7,000ヘクタールが新田開発された一方で、毎年約10万ヘクタール以上が、宅地や工業用地など水田から他目的の用地へ転換された。

中央統計局によると、水田面積は02年に1,150万ヘクタールだったのが、10年後の2012年には808万ヘクタールへと減少した。とくにジャワ島では561万ヘクタールから344万ヘクタールに減少し、過去10年間の全国の水田減少面積の63.4%を占めた。米作の中心地であるジャワ島の水田面積の減少は今後も進行していくものとみられる。

水田面積の減少にもかかわらず、コメの生産量は、02年の5,140万トンから12年には6,874万トンへ増加した。コメの土地生産性は大きく上昇し、今やタイを上回るという。しかし、農家世帯あたりの水田面積は、タイの3.5ヘクタールに対して、インドネシアは0.3ヘクタールに過ぎない。

若者はどんどん農村を離れ、農業の後継者不足が深刻化している。少額とはいえ土地建物税が課され、収益の少ない水田を、農家が売ろうとすることを抑えることは難しい。

政府には、コメ生産向けの肥料補助金の効果的利用や農家子弟の教育のための奨学金を増やすなどの考えがあるが、コメ生産の零細性を変える抜本的な農地改革に取り組めるかどうかが注目される。

【インドネシア政経ウォッチ】第67回 農家世帯数の大幅な減少(2013年12月12日)

中央統計局は12月2日、2013年農業センサス結果の概要を発表した。農業センサスは10年に1度実施され、前回は03年である。この10年間、インドネシアは中進国へ向けて経済成長を続けてきたが、その陰で、農家世帯総数は03年の3,123万世帯から13年には2,614万世帯へ大きく減少した。

特に減少が顕著なのは野菜・果物と畜産である。野菜・果物は、03年の1,694万世帯から1,060万世帯へ、畜産も1,860万世帯から1,297万世帯へ急減した。経済が豊かになると、コメなどの主食を補う野菜・果物や畜産品の消費が伸びるはずだが、インドネシアではそれらの担い手が減り、輸入品への依存を高めている。

他方、興味深いことに、米作は1,421万世帯から1,415万世帯へとほとんど減っていない(注:農家1世帯が米作と野菜・果物など複数に従事する場合を含むため、農家世帯総数は他の総和より小さくなる)。

耕地面積が0.5ヘクタール未満の小農は、03年の1,902万世帯から13年には1,425万世帯へと、これも大きく減少した。とりわけ、ジャワ島での減少が顕著で、中ジャワ州で132万世帯、西ジャワ州で120万世帯、東ジャワ州で114万世帯も減少した。その結果、農家1世帯当たりの平均耕地所有面積は03年の0.41ヘクタールから13年には0.89ヘクタールへ増加した。経済成長に伴い、農村から多くの労働力が都市へ吸収され、農地の細分化に歯止めがかかってきた様子がうかがえる。

近年、特にジャワの農村では、若い世代が農業を継がないことが問題となっている。農業人口の減少を生産性向上で補うため、人口が多くて無理といわれたジャワ島でも機械化が検討され始めている。実際、中ジャワ州バンジャルヌガラ県は、韓国との協力で農業機械化を試行し始めた。

まさに、1970年代の高度経済成長期の日本の農村をほうふつとさせるような光景だが、農協のような、機械化を支えるファイナンス面の準備はまだない。このままいけば、15年の東南アジア諸国連合(ASEAN)経済自由化により、インドネシアがさらに農産物を輸入に依存していくことは確実である。

【インドネシア政経ウォッチ】第49回 コメの輸入は是か非か(2013年 8月 1日)

踊り場に来たと言われるインドネシア経済。経済成長率見込みが下方修正され、予想インフレ率が大きく上昇する中、異常気象に伴う農業生産の減退が心配されている。しかし、コメ生産について言えば、政府は自給を達成できると楽観視している。

2012年のコメ生産はモミ米換算で6,905万トン、精米換算で4,005万トンであった。現在、インドネシア人1人当たりのコメの消費量は年間139キログラムであり、単純に人口を掛け合わせると、コメの年間消費量は3,405万トンとなり、約600万トンの余剰となる計算である。他方、貯蔵米の理想的な比率は全生産量の15%程度とされるが、現在、食糧調達公社(Bulog)が保有する貯蔵米は約200万トン程度にすぎない。

総量ではコメの自給を十分達成しているが、Bulogの保有する貯蔵米は不十分である。コメの輸入を通じて貯蔵米を増やすべきかどうか、政府内でも激しい論争が起こった。

3月、Bulogを監督するイスカン国営企業相は「コメの輸入は不要」と述べたが、ギタ貿易相は4月に、ミャンマーから50万トンのコメを輸入すると発表した。ミャンマーからのコメ輸入は、インドネシアからの肥料輸出とのバーター契約に基づくものである。インドネシアの国営企業はミャンマーへの投資を本格化させようとしており、その一環としての肥料輸出という性格がある。

政府はコメの消費量を減らし、トウモロコシなど他の食糧への転換を促している。同時に、炭水化物主体の食生活を多様化し、タンパク質の摂取を高める方策を打ち出した。日本人の2倍のコメを消費するインドネシア人がそれを10%減らすだけで、十分な貯蔵米を確保できる。コメの自給は決して難しい話ではない。

しかし、コメの輸入は別の論理で動く。様々な利権も絡む。コメの輸入は不要と発言したはずのイスカン大臣は、「輸入するならベトナムからにすべき」とも語ったが、これは不可解である。貿易自由化を錦の御旗に、コメの輸入を継続しようとする動きは続くものと見られる。

 

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【インドネシア政経ウォッチ】第31回 野菜・果物の輸入規制(2013年 3月 21日)

好調なインドネシア経済にインフレの影が忍び寄っている。消費者物価上昇率は2012年通年の4.30%に対して、13年1月は前年同月比4.57%、2月は同5.31%と、上昇傾向がさらに顕著となった。とりわけ、2月に最も上昇したのは食料品である。中央統計局は、政府が野菜・果物の輸入を規制しているのに対し、国内農家からの供給が不足していることが原因とみている。

インドネシアはまだ農業の比重が高い国ではあるが、野菜や果物を中国などから大量に輸入している。このため、政府は、国内農家保護と国内生産振興のため、これらの輸入規制を実施している。ただし輸入禁止ではなく、収穫期などの状況を見ながら、農業省が輸入業者へ輸入推薦状を発行するかしないかで規制をかけている。

300種類以上の野菜・果物のうちで貿易対象は90品目あり、規制対象は20品目。そのうち年前半に収穫期を迎える13品目が1~6月に、年後半が収穫期の7品目は7~12月に規制される。ちなみに、1~6月の規制対象は、ジャガイモ、キャベツ、ニンジン、トウガラシ、パイナップル、メロン、バナナ、マンゴー、パパイヤ、ドリアン、菊花、ラン花、ヘリコニア花である。ただし、これ以外でも、輸入推薦状の発行の可否で輸入規制が可能になる。

このところ大問題となっているのがニンニクである。ニンニクの価格は、数週間前まで1キロ当たり1万ルピア台だったが、たとえば先週の東ジャワ州ジェンブルでは10万ルピアを超えたと報道されている。ニンニクはインドネシア料理に欠かせない日常の食材であるにもかかわらず、需要の95%を輸入に依存している。

現在、多くの輸入ニンニクがスラバヤ港にとどまっている。ニンニク輸入業者側は、農業省からの輸入推薦状の発行が遅れて搬入できないと政府を非難する。一方、輸入許可等の書類は整っているのに、輸入業者が価格上昇を期待して意図的に搬入を遅らせているとの見方もある。庶民の生活に直結する問題だけに、早急な解決が求められる。

 

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