【スラバヤの風-41】バニュワンギのブランドコーヒー

インドネシアは知られざるコーヒー大国である。2014年のコーヒー生豆の全世界の生産量・日本の輸入量のいずれでも、ブラジル、ベトナム、コロンビアに次いで第4位を占めている。日本で知られるトラジャ、マンデリンなどはインドネシア産コーヒーである。

日本でのインドネシア産コーヒーは、缶コーヒーやインスタントコーヒー用にブレンドさせる豆として輸入される。メディアでは、ジャコウネコの糞から豆を取り出す、高価なルワック・コーヒーが有名になった。今回注目するのは、インドネシア国内での産地別コーヒーのブランド化である。

日本で珈琲店に行くと、ブレンド以外に、モカ、ブラジル、コロンビア、ブルーマウンテンなど、世界中の産地別のコーヒーを味わうことができる。インドネシアは、それを国内産地別にやり始めたのである。全部のカフェではないが、アノマリ・カフェなどの一部ではアチェ・ガヨ、スマトラ・マンデリン、フローレス、パプアといった産地別のコーヒーを味わえる。ガルーダ・インドネシア航空のビジネスクラスでも、スマトラ・リントンやトラジャ・カロシなどのインドネシア産コーヒーを香り高く出してくれる。

これらの産地別コーヒーのほとんどは、標高800メートル以上の高地で栽培されるアラビカ種であり、それ以下の標高で栽培されるロブスタ種に比べると生産量は少なく、価格も高い。日本の缶コーヒーやインスタントコーヒー用の多くは廉価のロブスタ種である。

ところが、そのロブスタ種でもブランド化が行われている。バリ島に面するジャワ島最東端の東ジャワ州バニュワンギ県では、ローカルレベルでブランド化を試みている。県内の産地別に、ラナン、ガンドゥルン、クミレン、レレン・イジェンなど、バニュワンギの産地や地域性を象徴するブランドを付けて提供している。これらのコーヒーはロブスタ種であり、決して高価ではない。

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残念ながら、これらのローカルブランド名をスラバヤで聞いたことはなく、バニュワンギに来て初めて知った次第である。でも、もしこのコーヒーを誰か専門家や著名人が「おいしい」と言えば、一気に有名になる可能性もないわけではない。地産地消により資金が地域内で回るという観点からは、少量生産の地元コーヒーを地元の人や訪問客に味わってもらうというレベルがむしろちょうどよいともいえる。

インドネシアは、国際商品であるコーヒーの産地別ブランド化が一国内で可能な稀有な国であろう。バニュワンギのレアなコーヒーも含めて、本物の美味しいコーヒーを飲むならインドネシアへ、という日がもう来ているのかもしれない。

 

(2015年1月17日執筆)

 

【マカッサル】トアルコ・カフェがオープン

6月8日、マカッサルへ行った際に、たまたま、トアルコ・カフェのオープンに立ち会うことができた。

このカフェは、日本のキーコーヒーが出資し、コーヒー農園とコーヒー集荷・輸出を手がけるトアルコ・トラジャが経営する直営のカフェ。すなわち、あのトアルコ・トラジャのトラジャコーヒーが産地直送で飲める、のである。

店内は清潔で、意外に広い。落ち着いた色調の内装でまとめられており、殺風景で音楽が無神経に鳴り、若者たちのタバコの煙であふれる、雑然としたマカッサルの一般のカフェとは明らかに一線を画している。ここなら、ゆっくりと静かにくつろげそうだ。

さっそく、トラジャコーヒーを注文。出てきたコーヒーは、これまでにトアルコ・トラジャのコーヒー農園や東京のキーコーヒー本社でいただいたものと全く同じ味のコーヒーだった。とうとう、これがマカッサルで飲めるとは。

次に、ケーキが美味しいと聞いたので、リングシューとストロベリーショートケーキを両方食べてみる。この際だから、カロリーのことを一瞬忘れることにする。

リングシューは生クリームとカスタードクリームが入り、とくに生クリームのミルクの美味しさがしっかり出ていてビックリ。生地もサクサクしていて、とても美味しい。

イチゴシュークリームは、ケーキ生地がしっとりとしており、生クリームがやはり美味しい。日本に比べればイチゴは今ひとつだが、十分に合格点をあげられる。なお、イチゴは、地元の南スラウェシでも作られており、さらなる品種改良が進められればと思う。

この二つのケーキとも、インドネシアのスイーツにありがちな激甘さがない。日本人好みの甘すぎないケーキである。これら以外にも、なめらかプリンなどもある。

コーヒーやケーキ以外にも、オムライス、カレーライス、スパゲティーといった日本の洋食ものを中心とした食事メニューも充実している。そしてこれらも美味しいのだ。

開店までに、日本から職人を招いて、コーヒーやケーキ作りなどの指導を何か月もかけて行ってきたそうである。今はまだ、日本からの職人が駐在し、品質のチェックに余念がない。そう、今なら日本のものと同じ品質のものがこのトアルコ・カフェで味わえる、というわけである。

そう、こんなカフェを待っていた。現時点では、スラバヤにはこのレベルのスイーツやコーヒーが楽しめる静かなカフェはない。おそらく、ジャカルタでも極めて少ないのではないか。トアルコ・カフェがコーヒー輸出の地元であるマカッサルから始まった、ということが個人的にはとてつもなく嬉しい。

マカッサルで成功したら、次は、バリ島やスラバヤなどへの展開も是非考えて欲しいところだ。

トアルコ・カフェは、Jl. Latimojongのスズキのディーラーのすぐ前にある。マカッサルに行かれたら、ぜひ立ち寄って、本物のトラジャコーヒーと日本並みに美味しいケーキや洋食を存分に味わってほしい。

さあ、コーヒーの次は、スラウェシのカカオで世界最高のチョコレート、だ。