【インドネシア政経ウォッチ】第36回 高校卒業国家試験の顛末(2013年 4月 25日)

インドネシアでは、小学校、中学校、高校に卒業国家試験があり、これに合格すると卒業資格を得る。毎年この時期になると、卒業国家試験のあり方が国民的な議論となる。

今年も、高校卒業国家試験で混乱を極めた。同試験は4月15日に実施予定だったが、南・東カリマンタン州、スラウェシ全州、バリ州、西・東ヌサトゥンガラ州の11州・110万人については、4月18日に実施が延期された。問題用紙の配布が遅れ、4月15日に間に合わなかったというお粗末な理由によるものだ。

延期された18日になっても完全には行き渡らなかった模様である。それを見越して17日、教育文化省は、警察、地方の教育局、大学による監視を条件に、「試験問題用紙が足りない場合はそのコピーでも可」と通告する有様だった。その場合、受験生は解答用紙がないため、問題用紙に解答を書くことになる。なお、日程変更で、懸念されたのは問題内容の漏洩(ろうえい)であるが、試験問題は20種類あり、地域ゾーンによって別々の試験問題を使うので心配ないと政府は説明する。

試験問題の漏洩やカンニングは、卒業国家試験では常に大きな話題となり、それが発覚して卒業資格取消となるケースがある。さらには、教師が試験問題の解答を教えるという事態さえ起こることがある。卒業国家試験の合格率の高い学校や教師は優秀と評価されるため、合格率を上げるために積極的に行われるのである。

背景には、学校教育現場で成績が公正に評価されない現実がある。学校や教師は、政治家、高級官僚、実業家などから寄附や資金援助を受ける見返りに、彼らの子弟に特別な配慮を払う。何かあれば親から電話一本で圧力がかかるのである。

こうした学校教育環境のなかで、子供たちは世の中の不公正な現実を疑似体験し、さらには真摯(しんし)に学習する意欲を失い、卒業資格を取るためのテクニックへ走ってしまう。卒業国家試験をめぐる問題の根は深く、より構造的な問題にメスが入られなければならない。

 

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