【インドネシア政経ウォッチ】第52回 出稼ぎ労働者が地域経済を支える(2013年8月29日)

8月18~19日、インドネシア外務省の肝いりで、ジャカルタで第2回海外在住インドネシア人会議が開催された。現在、海外在住のインドネシア国籍保持者およびインドネシア系外国籍保持者は、26カ国に約2,000万人いるとみられるが、政府が公式に把握しているのは約800万人にとどまる。その中には、約200万人の出稼ぎ労働者が含まれるが、インドネシア経営者協会(Apindo)によれば、実際には700万~800万人とみられる。

インドネシア人出稼ぎ労働者は、サウジアラビア、カタールなどの中東諸国だけでなく、シンガポール、マレーシア、台湾、香港、韓国などのアジア諸国にも在住し、主に男性は建設現場や工場での単純労働、女性は家事・看護・介護労働に従事している。近年、格安航空網の発達で彼らの移動はスムーズになり、どこへ行っても、彼らと出会うことが多い。

毎年6%台の経済成長が続き、雇用機会も拡大しているインドネシアにおいて、海外へまだ多数が出稼ぎに行く現状は、根強い地方の貧困層の存在や彼らを吸収しえない国内労働市場の構造問題を示唆する。実際、彼らが帰国した後の就業や起業は難しく、政府もようやくその支援に乗り出し始めた。また、海外出稼ぎ労働者の技能・熟練度を高め、労働力の質を上げなければ、2015年の東南アジア諸国連合(ASEAN)自由市場化を控えて、インドネシアは単純労働力の送り出し国にとどまったままになる、という危機意識も政府内にある。

しかし、その一方で、彼らがインドネシア国内へ送る海外送金は、インドネシアにとっての貴重な外貨収入であり、その額は2013年上半期に37億1,600万米ドル(約3,610億円)と推計される。とくにレバラン(イスラム教の断食明け大祭)前には送金額が急増し、彼らの郷里の地域経済はその恩恵を受けることになり、しばしば「外貨獲得の英雄」と持ち上げられる。また、彼らの海外送金は、今の厳しい国際収支の状況を若干なりとも緩和してくれる。

きらびやかな首都ジャカルタの発展の陰で、「英雄」たちの海外送金は、地域経済を支えている。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20130829idr019A

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