南スラウェシで石川県関係者とともに米の直播状況を視察(2018年9月9~15日)

2018年9月9~15日、石川県の関係者とともに、南スラウェシ州での米の直播の現状を調べるため、南スラウェシ州(ワジョ県、ピンラン県、マカッサル)とジャカルタを訪問しました。

石川県と南スラウェシ州は、ともに農業労働力の不足という深刻な問題に直面しています。この問題を克服するための方策として、米の直播に注目しています。

石川県の関係者は、様々な水田を視察し、現場を見ながら米農家と意見交換を行い、色々と実りある情報を得ることができました。今後、次のステップとして、石川県と南スラウェシ州の間で農家どうしが交流し、直播を含む米作に関する知識や経験を深く交換できる機会があることを願っています。

【インドネシア政経ウォッチ】第101回 ジャワ島の水田が消えてゆく(2014年9月25日)

好況で投資ブームに沸くインドネシアは、人口ボーナスも続き、中長期的な成長可能性が大きいが、実はその陰で深刻な問題が露呈している。コメの供給問題である。

インドネシア人の主食は今、9割以上がコメである。1950年代頃は主食に占めるコメの比率が5割程度で、キャッサバ、トウモロコシ、サゴヤシでんぷん、イモなども主食の一角を占めていた。ところが、70年代のいわゆる「緑の革命」でコメの高収量品種が導入されて生産が急増したため、主食のコメへの転換が進んだ。その結果、インドネシアの食糧政策の基本はコメの自給・供給確保となった。

しかし、そのコメを作る水田面積が減り続けている。9月21日付コンパス紙によると、2006年から13年の7年間、毎年約4万7,000ヘクタールが新田開発された一方で、毎年約10万ヘクタール以上が、宅地や工業用地など水田から他目的の用地へ転換された。

中央統計局によると、水田面積は02年に1,150万ヘクタールだったのが、10年後の2012年には808万ヘクタールへと減少した。とくにジャワ島では561万ヘクタールから344万ヘクタールに減少し、過去10年間の全国の水田減少面積の63.4%を占めた。米作の中心地であるジャワ島の水田面積の減少は今後も進行していくものとみられる。

水田面積の減少にもかかわらず、コメの生産量は、02年の5,140万トンから12年には6,874万トンへ増加した。コメの土地生産性は大きく上昇し、今やタイを上回るという。しかし、農家世帯あたりの水田面積は、タイの3.5ヘクタールに対して、インドネシアは0.3ヘクタールに過ぎない。

若者はどんどん農村を離れ、農業の後継者不足が深刻化している。少額とはいえ土地建物税が課され、収益の少ない水田を、農家が売ろうとすることを抑えることは難しい。

政府には、コメ生産向けの肥料補助金の効果的利用や農家子弟の教育のための奨学金を増やすなどの考えがあるが、コメ生産の零細性を変える抜本的な農地改革に取り組めるかどうかが注目される。

【インドネシア政経ウォッチ】第49回 コメの輸入は是か非か(2013年 8月 1日)

踊り場に来たと言われるインドネシア経済。経済成長率見込みが下方修正され、予想インフレ率が大きく上昇する中、異常気象に伴う農業生産の減退が心配されている。しかし、コメ生産について言えば、政府は自給を達成できると楽観視している。

2012年のコメ生産はモミ米換算で6,905万トン、精米換算で4,005万トンであった。現在、インドネシア人1人当たりのコメの消費量は年間139キログラムであり、単純に人口を掛け合わせると、コメの年間消費量は3,405万トンとなり、約600万トンの余剰となる計算である。他方、貯蔵米の理想的な比率は全生産量の15%程度とされるが、現在、食糧調達公社(Bulog)が保有する貯蔵米は約200万トン程度にすぎない。

総量ではコメの自給を十分達成しているが、Bulogの保有する貯蔵米は不十分である。コメの輸入を通じて貯蔵米を増やすべきかどうか、政府内でも激しい論争が起こった。

3月、Bulogを監督するイスカン国営企業相は「コメの輸入は不要」と述べたが、ギタ貿易相は4月に、ミャンマーから50万トンのコメを輸入すると発表した。ミャンマーからのコメ輸入は、インドネシアからの肥料輸出とのバーター契約に基づくものである。インドネシアの国営企業はミャンマーへの投資を本格化させようとしており、その一環としての肥料輸出という性格がある。

政府はコメの消費量を減らし、トウモロコシなど他の食糧への転換を促している。同時に、炭水化物主体の食生活を多様化し、タンパク質の摂取を高める方策を打ち出した。日本人の2倍のコメを消費するインドネシア人がそれを10%減らすだけで、十分な貯蔵米を確保できる。コメの自給は決して難しい話ではない。

しかし、コメの輸入は別の論理で動く。様々な利権も絡む。コメの輸入は不要と発言したはずのイスカン大臣は、「輸入するならベトナムからにすべき」とも語ったが、これは不可解である。貿易自由化を錦の御旗に、コメの輸入を継続しようとする動きは続くものと見られる。

 

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【インドネシア政経ウォッチ】第6回 コメ中心主義からの転換(2012年 9月 6日)

世界的に食糧危機が懸念される中、今年はインドネシアにおける農作物の生産が好調だ。7月発表の中央統計庁の統計によると、通年でコメの生産量(もみ米ベース)は前年実績比4.3%増の6,859万トンと予想されている。

昨年は住宅や工場用地への転換などで水田耕作面積が前年比で3%減少したこともあり、前年比で1.7%減少した。しかし、前年と耕作面積が変わらない2012年は、ジャワ島でコメの生産性が4.5%増と大幅に上昇したほか、ジャワ島以外での耕作面積も3.3%増える見通しなど明るい材料が多い。

ここ数年減産が続いていたトウモロコシも、耕作面積の拡大と生産性の向上により、今年は前年比7.4%増の1,895万トンになることが見込まれている。一方で減産が予想される主要作物は大豆くらいだ。

生産量が増えている農産物だが、中長期的な食料安全保障の観点からみると懸念事項が残る。特に1人当りの年間消費量が139キログラムで、日本の2倍以上と多いコメがそうだ。

1950年の主食に占めるコメの比率は5割程度だったが、「緑の革命」によるコメの増産を経て2010年には95%に上昇した。コメを食べることが「文明化」と同一視され、コメ以外食べなくなったのである。

政府は状況を打開するため、コメ生産量の大幅な増加に加え、コメ以外の食糧へと生産を多角化する方向性を打ち出した。消費量を7.5%下げれば、世界最大のコメ輸出国になれるという民間の試算もある。

昨今の現地でのグルメ・ブームは、ローカル食の再評価を促している。生活に余裕が生まれ、食に対する国民の関心が増えた今こそ、コメなど炭水化物中心の生活から脱却し、食文化をより豊かにする好機である。

 

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