言葉が下手だからコミュニケーションできない・・・

今日、用事があってスラバヤ市政府の役人と会った。インドネシア語でいろいろ説明していると、その途中で先方が言い出した。「せっかくこちらがお前を助けてあげようとしているのに、お前の言葉が下手だからコミュニケーションができない」と。要するに、私とは話をしたくない、という婉曲表現である。

助けてあげたいのにできない、というのも彼らの常套文句で、助ける気などこれっぽっちもないのに、恩着せがましく言うのである。

この役人は、私がいきなりアポなしで会いに来たのが気に入らなかったのである。私は、来週スラバヤに来る訪問団のアポを取るため、正式レターを出す前にどの部署を訪ねるのがよいか、探るために出かけたのである。インドネシアでは進んでいるといわれるスラバヤ市政府でも、全ての部署の電話やメルアドが明記されている訳でもなく、また電話しても途中で切られてしまうことが少なくない。今回、ある程度当たりを付けてから、レターを出す心づもりだった。

でも、役人はレターなしで来る人間には極めて冷たい態度をとる。もしそうなら、あの不愉快な役人は私と会うのを拒み、「レターがなければ会えない」と言いさえすればよかったのだ。それを面会に応じ、いやそうなそぶりを見せながら「お前を助けたいのに、お前の言葉が下手なせいで助けられない」などとわざわざ言うのである。結局、結論は「レターを出せ」なのであった。

こうした経験は、スラウェシやマカッサルにいた時にはまずなかった。数少ない経験ではあるが、それはいずれもジャワでの経験である。言い訳になるかもしれないが、これは決してジャワを悪く言いたいがための話ではないことを断っておく。

ふと25年近く前の出来事を思い出した。前にもブログに書いた話かもしれないが、もう一度書く。あのときは、ジャカルタで日本から来た専門家のセミナーで、慣れないながらも通訳をさせられた。セミナー出席者は模範工場を見学し、その感想を述べる場面で、その模範工場の欠点ばかりを指摘した。専門家は「本当に欠点ばかりだったのでしょうか。ご自分の工場と比べてよかった点は率直に認めることも必要ではないでしょうか」と述べた。私はそれを通訳した。
まとめのセッションで、参加者の感想を述べ合う時間が来た。そこで参加者のほとんどは、「通訳のインドネシア語が下手だからよく分からなかった」と述べたのである。私は泣きそうになった。セミナー参加者は、専門家の言葉に直接反論できないので、通訳を標的にして、自分たちが劣っているということを面前で認めずに済ませたのである。私は、そのいやらしさを痛感しながら、「自分の通訳の能力不足のせいなのだ」とセミナー参加者へ何度も詫びた。
あのときと同じ「いやらしさ」を、今日の役人との面会で久々に感じた。
言葉が下手だからお前とはコミュニケーションできない、と言われれば、そりゃあ、30年近くインドネシアと付き合い、インドネシア語でやり取りしてきたとはいえ、外国人のインドネシア語だし、と思うほかない。この30年で、インドネシア語も相当に乱れてきており、高校生の書くインドネシア語の文章などびっくりするぐらい下手で、赤ペンで添削したくなるようなレベルなのだが、私のはあくまでも外国人のインドネシア語、そう思うことにしている。
気分的なものにすぎないのだろうが、こうした「いやらしさ」の経験が、私自身、どうしてもジャワというものを心の底から好きになれない要因となっていることを否定できない。

2 comments

  • そういえば、確かにジャワ人は日常会話の中でも、「あなたのインドネシア語は分からない/うまくない」という言い方をすることがよくあります。最初の頃は逆上してましたが、相手を貶めることによって、自分の立場を確保しようとするのかなと感じます。また逆に、自ら被害者づらすることによって、相手を悪者に仕立てたがる傾向もあるように思います。おそらく、彼らの中には、対等な個人関係というのがまだないのでしょうね。

    私は、ジャワはまあ好きではありますが、心の底から信用するまでには至っていないですね…正直なところ。 スラウェシやマカッサルでは…違うのですか?

    ちなみにお前の言葉が下手だとかわからないとか言われたときの私の対応方法(会議や役所では無理でしょうが)…、「あなたはジャワ人のくせに大変kasarですね。日本人はalusだから、そんな失礼なことを直接人には言わないのですよ。日本で働いているTKIにそんなことを言う日本人はいないですよ」 と笑いながら言います。松井さんには叱られそうですが…。喧嘩を売っているように聞こえるかもしれませんが、この対応で二の句を継いできたジャワ人はまだいないです(笑)

  • タイトルを見て、「言葉が下手って誰のことだろう?」と思ってブログに来ました。松井さんのことを言っているとは、びっくりしました。ジャワ人というか、ジャワのお役所がそんな雰囲気なんでしょうか?庶民にはそんな複雑怪奇な心理的駆け引きはないのかも。私の姑はモジョケルトの村に生まれて育ったジャワ人ですが、以前日本からお土産のお菓子を持って行ったとき”ngak enak!” と言い放ち、夫が私に済まなそうな顔をしていたことを覚えています。また別の機会に日本の富士りんごをあげると、にこにこして喜んで食べました。今まで夫のお母さんと付き合っていて、細やかな気遣いはないけれど、ある意味正直な人なんだなあ。。。と思っています。役所に疲れたら、どうぞジャワの田舎へいらしてください。

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