【インドネシア政経ウォッチ】第81回 労働組合による大衆動員は不発(2014年4月3日)

3月16日から総選挙のキャンペーンが始まった。スハルト時代のようなバイクや車でのラリーは禁止され、政党がキャンペーン会場に人を集めるのも四苦八苦であり、大衆動員の政治の時代は終わったようである。それでも、政党や政治家は、数少ない大衆動員の手段とみなして労働組合へ接近した。

その結果、国内最大の全インドネシア労働組合総連合(KSPSI)は分裂し、闘争民主党員であるアンディ・ガニ議長以外に、ゴルカル党幹部のヨリス・ラウェヤイ氏が議長に就き、雇用側であるインドネシア経営者協会(APINDO)との緊密な関係を打ち出した。

他方、労働組合側も、政党や政治家を利用して、賃上げなどの要求を実現させようと動いてきた。大統領選挙では、アンディ・ガニは闘争民主党のジョコ・ウィドド(ジョコウィ)候補を、ヨリスはゴルカル党党首のアブリザル・バクリー候補を支持する。

最も戦闘的な労働運動を行ってきた金属労連(FSPMI)を率いる、インドネシア労働組合連合(KSPI)のサイド・イクバル議長は、グリンドラ党党首のプラボウォ候補支持を表明した。イクバルは昔、福祉正義党から国会議員に立候補し、闘争民主党にも近づくなど、彼個人に政治的野心があるとの批判がある。今回、非民主的とされるプラボウォを嫌う他幹部とイクバルとの溝が一層深まった。

労働デモの継続で労働組合の動員力を認知させ、政党や政治家が労働組合の意向を無視できない状況を作り出す。そして次の政権で有力ポストを得る。それがイクバルのシナリオだった。しかし、ジャカルタ首都特別州知事のジョコウィが2014年の州最低賃金を10%台に抑制したことで、そのシナリオは崩れた。

イクバルの敵となったジョコウィは、今や大統領候補として圧倒的な人気を誇る。イクバルとは対照的に、KSPSIのアンディ・ガニはジョコウィ内閣での入閣に期待を寄せる。

ジョコウィ人気のおかげで、政党や政治家が大衆動員の手段として労働組合を使う意味はほぼなくなったといえる。

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