感染対策から経済回復へ舵を切ったジョコ・ウィドド政権(松井和久)

【よりどりインドネシア第74号所収】

新型コロナウィルスの感染拡大の影響は、予想通り、長期化の様相を見せています。日本を含む多くの国々で、感染拡大の第二波を警戒しつつも、経済を回す必要から、コロナとの共存を前提とした「新たな日常」「新しい生活様式」への移行、すなわち自粛や規制の緩和への動きが一般化しつつあります。

インドネシアでも同様に、感染対策と経済回復を車の両輪のようにどうバランスをとっていくかは、ジョコ・ウィドド政権の最も肝要な政策課題となってきましたが、ここに来て、政権は、感染対策よりも経済回復を重視する方向へ舵を切った様子です。

7月20日、ジョコ・ウィドド大統領は、2020年大統領規則第82号に基づき、新型コロナ対策・国家経済回復委員会(Komite Penanganan Covid-19 dan Pemulihan Ekonomi Nasional)という新組織を立ち上げました。そして、同時に、これまで新型コロナウィルス感染対策を仕切ってきた「新型コロナウィルス緊急対策チーム」(Gugus Tugas Percepatan Penanganan Covid-19)を解散し、その機能を新組織のなかに組み込みました。

ジョコ・ウィドド大統領は、新組織立ち上げの理由として「感染対策と経済回復は切り離せない。ブレーキとアクセルを制御していく」と述べました。同時に、他国のような強力な都市封鎖(ロックダウン)を行わなかったので、2020年第1四半期のGDP成長率が2.9%、第2四半期がマイナス4.3%で済んだのであって、ロックダウンを実施していたら第2四半期はマイナス17%になっていた、ともコメントしました。

この大統領発言を見る限り、感染対策と経済回復の二兎を追う形のこの委員会は、一見すると、その両者のバランスを取るための適切な組織のように見えます。しかし、これは明らかに、ジョコ・ウィドド政権が感染対策よりも経済回復を重視する姿勢を鮮明にしたものなのです。

それはなぜなのかについて、以下で見ていくことにします。

(以下、本文へ続く)