【インドネシア政経ウォッチ】第22回 電気自動車の時代は来るのか(2013年 1月 17日)

インドネシアの自動車販売台数は、2012年に初めて100万台を突破した。日本メーカーの多くが内需だけでなく世界市場への生産拠点にも位置付けて拡張投資を進める中、自動車部品などを生産する下請企業の進出も相次いだ。輸出も昨年1~11月に25万台を超え、前年の19万台を大幅に上回るなど好調。名実ともに世界の自動車生産拠点の一角を占め始めた。

このような状況下で、政府は電気自動車の研究開発にも力を入れている。今月9日にはハッタ調整相(経済担当)を議長とする国家電気自動車開発調整会議を開催。教育文化省と科学技術国務大臣府の調整の下、専門家チームも発足させ、官民でそれぞれ複数の電気自動車のプロトタイプを試作している。今年10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際には、会議で使用する車をすべて電気自動車にする計画も出された。

国営電力会社のPLNによると、ジャワ=バリの電力には30%の余剰があるほか、夜間の未使用電力100キロワットを有効活用できる。家庭電源とは別に10~20分で急速充電できる充電機を1台1,000万ルピア(約9万3,000円)で設置可能としている。

最も推進に熱心なのは、ダハラン国務相(国営企業担当)である。しかし、今月5日に中ジャワ州の高速道路で、自身の運転するフェラーリ製の赤い電気自動車で衝突事故を起こし、ナンバープレートの偽造、無許可での電気自動車の走行など警察は道路交通法違反の疑いで大臣を取り調べる事態となった。大統領候補のダークホースと目されていた同相にとって、致命的な事件となった。

電気自動車に関する話題に事欠かないが、今のところ日本メーカーの関心は低いようだ。政府も技術協力を求めずに自前での開発を試みている。果たして電気自動車の時代はいつ頃来るのか。日本メーカーもインドネシア政府の動きを注視していく必要があるだろう。

 

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【インドネシア政経ウォッチ】第17回 国会議員対ダハラン国務相(2012年 12月 6日)

政党や国会議員が、省庁や国営企業に便宜を図った見返りを強要する疑惑がメディアを賑わせている。10月に国営ムルパティ航空が政府から増資を受けた際に、国会議員が関連法案を通した見返りとして礼金を要求したことが明らかになった。公表したのは、ムルパティを監督するダハラン・イスカン国営企業担当国務相。メディアから強く要求された結果、礼金を要求した国会議員10人のうち3人の実名を挙げる事態となった。

当然のことながら、名指しされた国会議員は身の潔白を主張した。その後、ダハランが一部について誤りを認めたため、国会議員は「名誉棄損で訴える」「大臣の罷免を要求する」と攻め立てる。ムルパティのルディ社長は、国会議員からの礼金要求は否定しなかったが、「自分は大臣に報告していない」とダハランをかばう姿勢を示した。

民主化後のインドネシアでは、省庁や企業による議会対策が極めて重要となった。議員たちに内容を理解してもらい、法律や政策を通してもらうためである。ゆえに、省庁や企業が「議会対策」の名の下で議員にさまざまな便宜を図るほか、逆に議員側が省庁や企業に要求をすることも一般化した。政党や議員にとっては大事な資金源となる。

11月14日、ディポ・アラム内閣官房長官は、国家予算絡みで3省庁が国会議員と不明朗な癒着関係にあると汚職撲滅委員会(KPK)に報告した。同長官によると、政府はすでに2005年からKPKに対して約1,600件の汚職疑惑の捜査許可を求めてきたが、そのほとんどが政党・国会議員に絡むものであるという。

国会で叩かれているダハランは次期大統領候補のひとりと目されている。一部の政治勢力の中には、今回の事件を通じてダハランにダメージを与え、大統領候補としての芽を摘みたいという思惑もあるようだ。ダハランはここでつぶされるのか。引き続き注目していきたい。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20121206idr019A

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