【インドネシア政経ウォッチ】第20回 地方分立モラトリアムはどこへ(2012年 12月 27日)

インドネシアの地方政府の数が増加している。州の数は現在33であるが、東カリマンタン州から北カリマンタン州が分立し、来年は34となる。北カリマンタン州は今年10月に国会で承認された。ブルンガン県、ヌヌカン県、マリナウ県、タナ・ティドゥン県、タラカン市を含み、タンジュン・セロールを州都とする。今年7月時点で、県は399、市は98である。

同時に西ジャワ州パンガンダラン県、西パプア州マノクワリ県、アルファク県、ランプン州西沿岸県の新設も認められた。今月13日には、東カリマンタン州上流のマハカム県、南スマトラ州下流のパヌカン・アバブ・レマタン県、東ヌサトゥンガラ州マラカ県、北マルク州タリアブ島県、西スラウェシ州中マムジュ県、中スラウェシ州海洋バンガイ県、東南スラウェシ州東コラカ県の設置も承認された。

地方分立が相次ぐ中、中スラウェシ州モロワリ県では、北モロワリ県の設置が認められなかったことを不服とする住民が暴動を起こした。分立を公約として当選した県知事が国会に出席しなかったことも火に油を注いだ。もともとモロワリ県自体がポソ県から分立した県だが、県都を北部のコロノダレに置くか、南部のブンクに置くかで抗争があり、敗れた北部が北モロワリ県の分立を主張してきた。

だが南部がなぜ今、北モロワリ県の分立を支持するのか。答は天然資源である。モロワリ県南部沖で近年、ガス田が見つかっており、南部で権益を独占するためである。天然資源の産出県には、いったん国庫に入った天然資源収入が傾斜的に再配分されるほか、地方税などの自己財源収入も期待できる。それを北部に分けたくない。モロワリ県以外でも、「天然資源」をキーワードにして地方分立が説明できるケースは少なくない。

ユドヨノ政権は、地方分立を当面停止するモラトリアムを宣言したままのはずだが、ここに来て急に認め出した。当然のことだが、2014年総選挙・大統領選挙を念頭に置いた「方針転換」である。

 

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