【スラバヤの風-40】ジュンブルといえば枝豆

東ジャワ州ジュンブル県にしかないものには、前回お知らせしたジュンブル・ファッション・カーニバルのほかにもう一つある。枝豆である。インドネシアで生産される枝豆のほとんどは、ジュンブル県で生産されている。

ジュンブル県で枝豆を生産・冷凍しているのはミトラタニ27という民間企業で、国営第10農園会社と民間企業の合弁会社である。1995年に設立され、ジェトロ専門家の指導に基づいて、枝豆生産・冷凍を開始した。生産量は年間6,500トンで、85%が冷凍枝豆として輸出される。輸出のうちの85%が日本向けで、残りは米国向けである。

しかし、日本の枝豆需要は6万トンあり、インドネシア産はその1割程度しか供給していない。輸入枝豆のシェアでも、インドネシアは5%程度であり、インドネシアと同じ頃に枝豆生産・冷凍を開始したタイ(25%)を大きく下回っている。同社からの日本向けの冷凍枝豆は、東京・銀座の料亭やレストランへ高級枝豆として提供され、タイ産よりも品質がよいとされているが、国内での生産量が伸びていないのが現状である。

枝豆はわずか70日で生育し、ほぼ毎日収穫できる。通常の大豆と同様、地力を高めるため、8〜11月はオフとし、連作は行わない。作付面積は1,000〜1,200ヘクタールだが、なかなか広がらない。枝豆の栽培は通常の大豆よりも様々な注意が払われ、ミトラタニ27社が農家に対して細かに品質管理を指導する。とくに輸出向けのために540の殺虫成分に関する検査をクリアする必要がある。

このため、枝豆の栽培コストは通常の大豆よりもはるかに高くなり、インドネシア国内市場での枝豆は高級食材となる。農家としては、通常の大豆よりも面倒な枝豆栽培を敬遠する傾向がある。

枝豆の種苗は台湾から輸入していたが、2008年に台湾が種苗輸出を禁止したため、現在は、かつて輸入した種苗を国内で増やしている。このため、ミトラタニ27社は枝豆の新品種導入などに不安を感じている。

このように、枝豆の栽培面積がなかなか増えず、新品種の導入が難しい状況のなかで、ミトラタニ27社自体も工場の生産能力を拡大させるタイミングを測りかねている。

枝豆は、ジュンブル県にしかない地域おこしの格好の対象産品であるが、国内での認知度が低く、高級イメージの強い現状では、県政府も積極的に枝豆をプロモーションする姿勢を見せていない。ミトラタニ27社も、枝豆だけに頼らず、オクラや他の野菜の生産・冷凍輸出の比重を高める方向性を探り始めている。

 

(2015年1月4日執筆)