【インドネシア政経ウォッチ】第33回 アチェの州旗・州章問題(2013年 4月 4日)

アチェ州は3月25日、カヌン(州令)2013年第3号により、州旗と州章を1976~2005年までかつての反政府組織・独立アチェ運動(GAM)が使ってきた旗と記章にすることを正式に定め、すべての行政機関で即時使用を義務づけた。GAMの旗と記章は、いわば、インドネシアと闘ってきたシンボルでもある。州政府は、アチェ行政に関する法律2006年第11号で「国旗以外に、アチェ州は独自の州旗を定めることができる」と規定されている点を挙げ、問題ないと認識している。

アチェは、政府側とGAM側が2005年にヘルシンキ和平協定を締結して戦争状態が終結し、アチェ特別自治の下、地方政党の結成など他州にはない独自策が認められた。その後の総選挙や州知事選挙では、GAM直系のアチェ党が勝利した。現在の正副州知事はいずれも元GAM高官・司令官であり、アチェ州政府は「元GAMの政府」といってよい。

2005年のヘルシンキ和平をめぐっては、インドネシア政府はGAMの壊滅が困難と認識し、GAMを体制内に取り込んで弱体化させることを目指した。他方、GAMはインドネシア政府に属しながらも、州政府を支配することで、実質的にGAMによる政府を実現させた。今回の州旗と州章の制定はその集大成の意味を持つ。

ただし、インドネシア政府のGAMへのアレルギー意識はまだ残っているようだ。内務省は、アチェの州旗と州章を定めたカヌンが上位法に照らして適正かどうか審査すると表明した。これを受けて、アチェ州政府は州旗と州章の即時使用を延期した。

しかし、実はアチェ内部で州旗と州章への反対運動がある。たとえば、コーヒーで有名な山岳部ガヨ族の代表は、GAMはアチェの一部種族しか代表していないと批判する。これが昔からのアチェ海岸部と山岳部の対立意識の反映なのか、あるいは政治的な動きなのか、注目される。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20130404idr023A

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