【インドネシア政経ウォッチ】第150回 内閣改造で政権安定へ(最終回)(2016年4月14日)

ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)大統領の周辺では、 再び内閣改造の噂が流れている。更迭がささやかれる大臣は何人もいるが、可能性が最も高いのがマルワン村落・途上地域開発・移住相である。

村落・途上地域開発・移住相のポストは、これまで民族覚醒党の政治家が座り続けており、同党の既得権 益と化してきた。大統領周辺によると、同省の年予算消化率が約25%と他省に比べて著しく悪く、現政権が力を入れる村落開発に関して期待通りの成果を上げていない。

一方で、事業の入札にあたっては20~30%分をリベートとして上積みすることが求められているとされ、大臣の弟を含む省外の近親者たちが省の事業を事実上、牛耳っていることに対して省内から強い批判が起こり、大統領宛てに大臣罷免要求の嘆願書が出される事態となった。

更迭の噂が出ているのはこのほか、リザル・ラムリ調整相(海事)とスディルマン・サイド・エネルギー・ 鉱物資源相である。この2人は、マルク州にあるマセ ラ天然ガス田開発をめぐって陸上方式か海上方式かで激しい対立を起こした。大統領はバランスをとって両者を更迭させたい意向のようだが難しい。リザル調整相の背後にはルフット・パンジャイタン調整相(政治・ 治安)が、スディルマン・エネ鉱相の後ろにはユスフ・ カラ副大統領がいる。

ジョナン運輸相にも更迭の噂がある。ジャカルタ~バンドン間の高速鉄道での中国案の採用に消極的だっただけでなく、1月の高速鉄道着工式に欠席したことから大統領の批判を受けているようだ。

こうした動きを見ると、ジョコウィ大統領に対する ルフット調整相やリニ国営企業相の立場が以前より強まってきたと言える。他方、両者と敵対する与党第1党の闘争民主党は影響力を低下させており、同党のメガワティ党首にはむしろ焦りの気配すらうかがえる。

内閣改造をちらつかせながら野党を取り込み、徐々に政権基盤を安定化させるジョコウィ大統領。なかなかしたたかである。

 

(2016年4月14日執筆)

 

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