【インドネシア政経ウォッチ】第47回 軍にクーデターの伝統はない?(2013年 7月 18日)
7月3日、エジプトで軍の絡む政権交代劇が起こった。合法的な選挙で選ばれたモルシ大統領が政権の座を追われ、軍主導の新政権が発足した。一部報道では「軍によるクーデター」とされるが、日米とも「クーデター」という言葉を注意深く避けている。
このエジプト政変に対して、7月4日、インドネシアのユドヨノ大統領がいち早くツイッターでつぶやいた。ユドヨノは「エジプトにおける軍の役割はインドネシアのそれと同じく、民主化を支持するということだ」「民主化への移行期には軍の役割が決定的に重要であるとオバマ米国大統領に語った」「劇的な政治変化を経験した民族は和解を進めなければならない。反対勢力を一掃すべきではない」などとつぶやき、今回のエジプト政変では民主化を進めるために軍が動いたと肯定し、国民和解への期待を示した。
しかし、インドネシアの民主化運動家やイスラム指導者などは、軍による事実上のクーデターとみなし、民主主義を否定する動きとしてエジプト新政権樹立を批判的にとらえた。ユドヨノ大統領のつぶやきは、あたかも民主化のためならば軍事クーデターを肯定するかのようにインドネシア社会で受け止められる可能性が出ていた。
こうした空気を察知したのか、7月8日、ムルドコ陸軍参謀長は「インドネシア陸軍にクーデターの伝統はない」「合法政権をクーデターのような非合法な手段で陸軍が覆すことはない」と発言した。実際、退役軍人の一部にはユドヨノ大統領への強い不満があり、彼らが軍と結んで政権打倒へ動くことをユドヨノ周辺が恐れる様子もあったのである。
果たして、インドネシアの軍にはクーデターの伝統が本当にないのか。この国には、1965年9月30日事件やアブドゥルラフマン・ワヒド政権末期など、軍が政権交代に関わった歴史があるが、軍のクーデターとはみなされていない。民主化で政治に口出しすることのなくなった軍だが、本当に民主化を進める役割を果たすのだろうか。
http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20130718idr019A
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