【インドネシア政経ウォッチ】第49回 コメの輸入は是か非か(2013年 8月 1日)
踊り場に来たと言われるインドネシア経済。経済成長率見込みが下方修正され、予想インフレ率が大きく上昇する中、異常気象に伴う農業生産の減退が心配されている。しかし、コメ生産について言えば、政府は自給を達成できると楽観視している。
2012年のコメ生産はモミ米換算で6,905万トン、精米換算で4,005万トンであった。現在、インドネシア人1人当たりのコメの消費量は年間139キログラムであり、単純に人口を掛け合わせると、コメの年間消費量は3,405万トンとなり、約600万トンの余剰となる計算である。他方、貯蔵米の理想的な比率は全生産量の15%程度とされるが、現在、食糧調達公社(Bulog)が保有する貯蔵米は約200万トン程度にすぎない。
総量ではコメの自給を十分達成しているが、Bulogの保有する貯蔵米は不十分である。コメの輸入を通じて貯蔵米を増やすべきかどうか、政府内でも激しい論争が起こった。
3月、Bulogを監督するイスカン国営企業相は「コメの輸入は不要」と述べたが、ギタ貿易相は4月に、ミャンマーから50万トンのコメを輸入すると発表した。ミャンマーからのコメ輸入は、インドネシアからの肥料輸出とのバーター契約に基づくものである。インドネシアの国営企業はミャンマーへの投資を本格化させようとしており、その一環としての肥料輸出という性格がある。
政府はコメの消費量を減らし、トウモロコシなど他の食糧への転換を促している。同時に、炭水化物主体の食生活を多様化し、タンパク質の摂取を高める方策を打ち出した。日本人の2倍のコメを消費するインドネシア人がそれを10%減らすだけで、十分な貯蔵米を確保できる。コメの自給は決して難しい話ではない。
しかし、コメの輸入は別の論理で動く。様々な利権も絡む。コメの輸入は不要と発言したはずのイスカン大臣は、「輸入するならベトナムからにすべき」とも語ったが、これは不可解である。貿易自由化を錦の御旗に、コメの輸入を継続しようとする動きは続くものと見られる。
http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20130801idr020A
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