【ぐろーかる日記】マナド料理はもっと知られてもよいはず

前回のソトベタウィ宮本の記事がけっこう読まれていて、ちょっとびっくりしています。私もそうですが、あのインドネシアの味を懐かしく思い出して、食べに行こうと思った方もけっこういたようです。

そのブログのなかで、ちらっとほのめかしたのが、ソトベタウィ宮本の料理の味の秘密。もともと、東京のインドネシア料理屋さんは、スラウェシ島の北にあるマナド出身の方が始めて、その系統がずっと続いてきたのでした。

年配の方なら、新橋にあった「インドネシアラヤ」や六本木にあった「ブンガワンソロ」の名前を思い出すのではないでしょうか。その後、1990年代に有名になった「ジュンバタンメラ」も、目黒の有名店「チャベ」(いつもお世話になっております!)も、流れとしては、マナド出身の方からの流れに連なっています。

以前から不思議だったのは、マナド出身者なのに、インドネシア料理でほとんどマナド料理が出てこないことでした。出てくるのは、ナシゴレンやミーゴレン、ジャカルタやジャワ島でお馴染みの料理で、これらが日本では「インドネシア料理」と認知されてきました。

ところで、そのマナド料理ですが、マナド自体が美食の街。バラエティに富み、なかなか美味しいのです。今、ジャカルタやスラバヤでは、新たにマナド料理を出す店が増えていますし、マナド市内にも新しいスタイルでマナド料理を出す店が出てきています。

マナド料理はおそらく、日本でも十分に受け入れられると確信します。

その理由の一つは、かつおだしで味をとる料理が色々あるからです。たとえば、ナシ・クニン(nasi kuning)という名のイエローライス。ジャワでのナシ・クニンは主に、お祝い事のときに、三角柱のような形に盛り、その下に肉や野菜を盛ったナシ・トゥンペンで有名ですが、マナドやスラウェシ(マカッサルでも)では、テイクアウトの朝ごはんとして普通に食べられています。

これがかつおだしのスープで炊かれるのです。その上に、甘辛く味付けされた牛肉やカツオのフレークなどが載り、ゆで卵が添えられます。ナシ・クニン用のサンバル(チリソース)をナシ・クニンにかけていただきます。

マナドのナシ・クニンは、テイクアウトも一般的です。ウォカ(woka)というロンタラ椰子の一種の葉で次のように包んで売られています。

中を開けると、こんな感じです。

これは、2016年5月21日にマナドのサムラトゥランギ空港で買ったものです。

それよりもずっと前の1999年6月、北スラウェシ州開発企画局の長官ご一行と一緒に、マナドから夜行便の船でタラウド諸島へ向かうとき、出発前に長官がナシ・クニンを買ってきて、私たちみんなに配ったことがありました。

夕方、マナドから出港する船の甲板でみんなでほおばったのですが、そのナシ・クニンの美味しかったこと! それまでに何度もナシ・クニンはインドネシアで食べていたはずなのですが、そのどれよりも、あの時食べたナシ・クニンは群を抜いて美味しかったのです。

マナドが立地するミナハサ半島は、カツオ漁が盛んなところで、日本のかつおだし調味料やめんつゆなどに使われるカツオは、実はここから出ているものがけっこうあります。一説には、日本の枕崎や糸満の漁師たちが戦前、この地までカツオ漁に来ていて、一本釣りの技術を伝えたとも言われています。

その立役者の一人である大岩勇氏については、脇田さんの「スラウェシ情報マガジン」に長崎節夫氏の書かれたメモがありますので、ご一読ください。

そう、マナド料理のカツオ味は、日本と密接につながっているのです。暑い夏にいただくそうめんや冷麦の麺つゆに、マナド周辺からのカツオが使われているかもしれません。

ナシ・クニンの話へ戻ると、マナド市内で美味しいナシ・クニンを出す場所は、セロジャ(Seroja)という店と、カンプン・コドック(Kampung Kodok)という集落にある数軒の店です。マナドはクリスチャン(プロテスタント)の人口比率が高いところですが、セロジャもカンプン・コドックも、ナシ・クニンを出しているのはムスリムの方々なのです。

カツオ味の料理といえば、ほかにも、カツオそば(mie cakalang)があります。かつおだしのスープに入った麺で、びっくりするぐらいのあっさり味。油ギタギタ、お腹にもたれると思われているインドネシアの料理のなかでも、特筆できるほどです。飲んだ後の〆の一杯に、まさにぴったりのカツオそばです。

私としては、マナド風のナシ・クニン、カツオそばを東京で食べたいなあと思うのです。ナシ・クニンはテイクアウト中心に。ソトベタウィ宮本のマナド出身の一族で、出してみてほしいと思いませんか。

東京できっと受け入れられ、市民権を得られると思うのですが。

ところで、マナド料理のなかには、これらのほかにも、日本で受け入れられそうな料理がいくつかあります。その話はまた別の回に・・・。

マナド料理は、もっと知られてよいはず、なのです。

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