【ぐろーかる日記】搾取からの脱出、またグローカルな妄想

宮本常一『調査されるという迷惑』という本をご存じだろうか。私がこの本の存在を知ったのは、インドネシア地域研究を仕事とするようになってしばらくしてからだったが、この本と出会う前から、この本で宮本常一が書いているのと同じようなことをずっと思っていた。

インドネシア地域研究者としての自分は、もちろん、インドネシアについて調査研究をする。インドネシアで様々な人々に会い、地域を訪れ、そこで得た情報をもとに分析し、調査研究報告書をまとめ、論文として発表する。

論文をどこに発表するのか。多くの場合は、日本語の出版物を通じた日本の方々に対してであり、あるいは学会やセミナーなどでの発表や講演という形になる。日本の機関に所属し、日本側に調査研究の費用を賄ってもらうのだから、日本のための調査研究であることは当然である。日本のために、インドネシアを調査研究し、日本社会へ還元するのは、言うまでもないことである。

かつて、地域研究は、相手側の地域において、自国の利害や利益を獲得するために、あるいは場合によっては相手側を屈服させて支配するための基礎情報として、相手側の地域を徹底的に調べるということが行われた。その意味で、地域研究は極めて戦略的かつ意図的に行われた。地域研究者の仕事は、そこではスパイと見なされてもあながち間違いではなかったかもしれない。

自国のために他国・地域の情報を収集・分析することを求められた、かつての地域研究。今はそうではないと思いたいが、本当にそうだろうか。

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