【インドネシア政経ウォッチ】第19回 ハビビ元大統領への侮辱(2012年 12月 20日)
12月20日から上映の「ハビビとアイヌン」という映画が評判だ。ハビビ元大統領と故アイヌン夫人との夫婦愛を描いた同名の本を映画化したものである。
ハビビ氏はスハルト政権下で科学技術担当国務相を何度か務め、1998年3月に副大統領、98年5月にスハルト大統領辞任に伴い大統領に就任した。スハルトの側近とされ、大統領就任後はインドネシアの民主化改革を実行した政治家として知られている。
そのハビビ氏を批判するコラムが今月10日、隣国マレーシアの有力紙『ウトゥサン・マレーシア』に掲載された。執筆したのは、ジャーナリストのザイヌッディン・マイディン元マレーシア情報相である。彼は「ハビビ氏が大統領になった後に東ティモールを独立させたのはインドネシア国民に対する侮辱である」「ハビビ氏が大統領になる前にマレーシアの会議で当時のマハティール首相らを2時間以上待たせたのはエゴ以外の何物でもない」などと述べ、マレーシアの反体制派指導者アンワル・イブラヒム元副首相と並べて「帝国主義の犬」と評した。
これに対してインドネシアの政治家は、同コラムがハビビ氏への侮辱であると同時に、インドネシアへの侮辱であると非難した。マレーシアが常にインドネシアを「上から目線」で差別的に見ていることの表れと位置づけ、ザイヌッディン氏に謝罪を求めた。二国間関係に影響を及ぼすことを懸念したマレーシア政府も、ザイヌッディン氏にインドネシア側への謝罪を求めたが、同氏は応じなかった。なお、ハビビ氏自身はコラムの件について特に反応を示していない。
ハビビ氏をめぐっては、大統領に就任後、なぜ側近だったはずのスハルト氏と距離を置いたのかなど疑問点はある。先週のテレビ番組のインタビューで、ザイヌッディン氏もそれに触れたが、インドネシア側コメンテーターはすぐに遮った。今は「ハビビとアイヌン」のイメージを壊さないことのほうが重要なのである。
http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20121220idr021A
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