【スラバヤの風-05】中小企業向け信用保証

中小企業がなかなか育たない理由の一つは、銀行から安心して融資を受けられないことにある。このため、中小企業向けの銀行融資を保証する仕組みづくりが重要になる。 中央レベルでは、信用保証会社(PT. Jamkrindo)と信用保険会社(PT. Askrindo)の二つの国営企業が信用保証を行っているが、中小企業については地方でよりきめ細かな対応が必要になる。日本の国際協力機構(JICA)による技術協力の下、中銀が中心となって各州での信用保証会社の設立へ向けた制度づくりを行ってきた。

その第1号となったのが東ジャワ州である。2010年1月、中小企業向け融資を保証する信用保証会社・東ジャワ州ジャムクリダ(PT Jamkrida Jatim)が他州に先駆けて設立された。最大出資者は株式の9割以上を持つ州政府であり、州内各県政府も出資する。

ただし、保証対象は東ジャワ州開発銀行(Bank Jatim)による融資に限られる。2.5億ルピアまでの融資はすべて自動保証されるが、2.5~7.5億ルピアの融資は審査が必要となる。保証期間は3カ月から最長6年、多くは3年以下である。保証料は保証対象融資額の1.5%を毎年支払い、これが信用保証会社の収入となる。インドネシアでは信用保証会社は利益を上げて、株主である州政府へ利益を還元することが求められる。実際、州議会では、ジャムクリダの収益がどれぐらい上がっているのかが常に議論となる。

2013年4月時点の保証総額は8000億ルピアに達しているが、一顧客当りの平均保証額は2000万ルピアと少額である。顧客の中小企業は約4万社あり、約12万人の雇用を支えている。しかし、東ジャワ州ではまだ290万社の中小企業が信用保証の恩恵を受けておらず、ジャムクリダがカバーしているのはごくわずかに過ぎない。

それでも、ジャムクリダの信用保証のおかげで、ある金属加工の中小企業が日本への委託生産品の輸出を始めるなど、いくつかの成功事例が生まれ始めた。ジャムクリダのヌルハサン社長は、「ジャムクリダの目的は中小企業振興を通じた貧困撲滅」と言い切る。もっとも、ジャムクリダの直接取引先は東ジャワ州開発銀行であり、その顧客である中小企業の融資を保証することで、間接的に中小企業振興に関わっているのである。

東ジャワ州ジャムクリダには、同様の信用保証会社を設立する他州からの視察者が後を絶たない。利益確保など困難に直面しつつも、ジャムクリダは中小企業向け地方信用保証会社のリーダーとしての役割を果たし続けようとしている。

【スラバヤの風-04】中小企業が地域経済に高い貢献

東ジャワ州は、インドネシアのなかで、協同組合や中小企業の振興に最も力を入れている州の一つである。その結果は、2012年の州内総生産(GRDP)に占める協同組合・中小企業部門の貢献が54.4%という、他州に比べてかなり高い数字に表れている。

活動停止中の協同組合の比率は、全国平均が27%であるのに対して、東ジャワ州はわずか12%に過ぎない。中小企業の事業所数は、2006年の420万事業所から2012年にはその1.5倍に当たる682万事業所へと大幅に増加した。682万事業所の6割以上が農業関連で占められている。東ジャワ州は農林水産業・同加工業の振興を地域開発の最優先課題と位置づけているが、その担い手のほとんどは協同組合や中小企業によるものといえる。

スラバヤ・ジュアンダ国際空港近くの東ジャワ州協同組合・中小企業局を訪問すると、役所棟に向かって左側に工芸館、右側にバティック(蝋纈染め)館が配置されている。いずれも州内の協同組合や中小企業によって作られた製品を展示即売する場所で、日本でいうところの地方特産品センターの位置づけである。

そして、役所棟の裏側には、州中小企業クリニックが配置されている。同クリニックは州内の中小企業に対し、事業相談、情報提供、アドボカシー、短期研修、起業家関連書籍センター、資金アクセス、市場アクセス、移動式クリニック、IT起業、中小企業オンラインテレビ、などのサービスを提供し、中小企業コンサルタントが常駐している。中小企業向けの短期研修は生産、経営、IT起業の3分野に分かれ、合計で1ヵ月に3〜4回の頻度で実施されている。

中小企業コンサルタントには、事業者と銀行を結ぶ役割も期待されている。彼らが有望な事業者を見つけ、帳簿つけからビジネスプラン作成に至るまで指導するとともに、銀行はコンサルタントを信用して融資を行う。インドネシア銀行の後押しで養成された銀行パートナー金融コンサルタント(KKMB)もそのような中小企業コンサルタントの一つであり、東ジャワ州では、KKMBの属する42団体の連合会が作られている。

2012年に東ジャワ州では一般銀行81行、庶民信用銀行(BPR)363行によって約240兆ルピアの融資がなされたが、実際の中小企業向け融資はその約3割に留まる。さらなる中小企業向け融資の促進には、もちろん信用保証を充実させる必要がある。そう考えた東ジャワ州政府は2010年、州レベルでは全国初となる信用保証会社(PT Jamkrida Jatim)を設立した。

ジャカルタで地場中小企業調査結果ワークショップ(2015.1.14)

日本経済研究所(JERI)の2名のコンサルタントと一緒に、インドネシアの地場中小企業へのインタビュー調査結果をフィードバックするワークショップを1月14日、ジャカルタのホテル・グラン・メリアで開催しました。

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ワークショップには、工業省中小工業総局長のほか、協同組合・中小事業省からは次官が3名出席するなど、関心の高さがうかがえました。

我々のチームは、2014年10月下旬〜11月上旬に、自動車部品を製造する地場中小企業17社のインタビュー調査を行ないました。その結果を踏まえ、かつ、工業省中小工業総局および協同組合・中小事業省による政策と照らし合わせながら、いくつかのポイントに論点を絞って議論を行いました。

そのポイントとは、地場中小企業による大企業へのマーケティングと新技術導入・設備投資を支える政策金融の2点です。

大企業へのマーケティングのためには、地場中小企業による共同受注をいかに可能とするかが課題の一つですが、そのためには、そこに関わる地場中小企業各々の詳細なデータベースづくりが必要となる、と提案しました。しかし、議論を通じて、データベース作りを担う優秀なコンサルタントをどう確保するか(インドネシアの経営指導員・中小企業診断士では難しいのではないかとの声あり)、データベースを作った後のデータの更新・メンテナンスを継続して行える体制を作れるのか、といった課題も明らかになりました。

また、新技術導入・設備投資のための政策金融については、既存の工業省による機械更新補助金やKURなどが念頭に置く中小企業に比べて、自動車部品製造の中小企業の設備投資額がかなり大きくなることから、同一レベルでは考えられないのではないかという声がありました。政策金融を新たに特殊銀行のような機関を作って実施するというアイディアに対しては、過去の経験を踏まえ、消極的な意見が出されました。

ともかく、今後のインドネシアでの中小企業支援政策を考えていくうえで、いくつかのヒントを提示することはできたのではないかと思います。最終報告書は3月、委託元である日本の中小企業庁へ提出される予定です。

それにしても、日本語とインドネシア語を怪しげに使い分けながら、3時間以上の議事進行を、途中でだらけることのないよう、集中して行なったため、かなり疲れました。しかも、朝から飲まず喰わずだったので、午後3時半に、我慢できずにペペネロでミートソース・パスタを食べてしまったのでした。そして、その2時間半後には焼肉+石焼ビビンバを食べてしまったのでした。

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