【インドネシア政経ウォッチ】第56回 低価格グリーンカーへの賛否(2013年9月26日)

先週、日系の自動車メーカー各社が低価格グリーンカー(LCGC)を販売開始した。排気量1200cc以下(ディーゼルエンジンの場合は1500cc以下)かつ燃費が1リットル当たり20キロメートル以上の低価格グリーンカー(セダンとステーションワゴンを除く)は、奢侈(しゃし)品販売税が免除され、販売価格が1億ルピア(約100万円)以下の車も現れた。部品国産化率が8割を超える車もある。

通貨ルピアを防衛するため政策金利が引き上げられたが、その影響で、自動車ローンの金利も上がる。自動車販売の減少が予想されるが、低価格グリーンカー販売の滑り出しは好調で、南スラウェシ州マカッサルなどの地方都市でも1,000人以上が予約したと報じられている。

そんな中、低価格グリーンカーへの反対意見も現れた。その急先鋒(せんぽう)は、ジャカルタ特別州のジョコ・ウィドド(ジョコウィ)知事である。交通渋滞に悩むジャカルタでは、低価格グリーンカーの登場で自動車台数がさらに増え、渋滞が悪化するとの懸念がある。さらに、ガソリン需要が高まることで、国際収支の悪化をさらに促す可能性もある。

ジョコウィは「必要なのは低価格グリーンカーではなく、低価格な公共交通機関である」と主張。そのためのインフラ整備が先決との考えを示した。また、中ジャワ州のガンジャル・ヌグロホ知事は、低価格グリーンカーの生産が外国企業によって主導されるのを批判する。ブディオノ副大統領は、ジャカルタの幹線道路に電子道路課金制を導入し、渋滞を悪化させない方策を採るとして、低価格グリーンカー導入への理解を国民に求めた。

インドネシアでは、技術評価応用庁、科学技術院、民間企業などが競って低価格な電気自動車の実用化を目指している。低価格グリーンカーは電気自動車へ至る過渡的段階に位置づけられるが、電気自動車の普及にはまだ時間がかかりそうである。

低価格グリーンカーは、景気低迷への特効薬となるのか。あるいは、渋滞と国際収支をさらに悪化させるのか。いずれにせよ、本格的なマイカー時代の幕開けは近い。

 

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