【インドネシア政経ウォッチ】第69回 都市部貧困人口の増加(2014年1月9日)
1月2日、中央統計庁はインドネシアの貧困状況に関する統計速報を発表した。これによると、2013年9月の貧困人口は2,855万人、貧困人口比率は11.47%となり、その前の13年3月時点での2,807万人、11.37%よりも増加した。これまで貧困人口比率だけでなく、貧困人口の絶対数も着実に減少し続けてきたが、それが久々に増加した。
貧困人口増加の背景には、経済成長の鈍化に伴う雇用創出の不足、失業率の上昇(13年2月の5.92%から13年8月には6.25%へ)、物価上昇などがあると考えられるが、これが一時的な現象なのか、貧困人口はますます増加していくのかを現段階で判断するのは難しい。
貧困人口は13年3~9月に48万人増加したが、30万人は都市部で占められ、そのうちの約24万人はジャワ島での増加である。他方、貧困人口の絶対数では都市部を大きく上回る村落部での貧困人口の増加は18万人にとどまり、しかも、ジャワ島では、全国の村落部で唯一、貧困人口が若干ながら減少している(836万6,000人から831万2,000人へ)。都市部では、バリ島とヌサトゥンガラや、マルクとパプアで貧困人口が減少している。
首都ジャカルタをはじめとするジャワ島の都市部では、高所得者層の消費需要が旺盛で、高級志向が強まり、その予備軍とも言える上位中間層の存在がクローズアップされがちであるが、その一方で、実は貧困人口が増加しているということになる。すなわちそれは、ジャワ島の都市部において、貧富の格差が拡大していることを示唆する。他方、村落部における貧困人口の増大は相対的に少なく、都市と農村との格差の問題が急速に深刻化しているとはいえない。
首都ジャカルタなどでは、狭い長屋のような住宅のすぐそばに高級コンドミニアムがそびえる光景が目につく。貧困人口の拡大に加え、そうした光景がもたらす相対的貧困感が低所得者層に意識され得る。一方、暴動などへの恐怖から、華人高所得者層には低所得者層の居住地から遠くへ移転し、接触を避ける傾向も見られる。都市部の貧困人口の拡大が社会不安につながるかどうか、注意深く見守る必要がある。