【スラバヤの風-42】ユニークな開発を目指すバニュワンギ
ジャワ島の東端、バリ島を目の前に臨む東ジャワ州バニュワンギ県は、ユニークな立ち位置にある。ここでは、車で6時間以上かかる東ジャワ州の州都スラバヤとの関係よりも、むしろ、フェリーを使ってわずか30分の、海を隔てたバリ島との関係を意識している。
観光地であるバリ島では環境アセスメントが厳しく、新規の製造業投資が制限される。家具、工芸品、縫製品などの新規・拡張投資は難しい。バニュワンギはそれらの受け皿としての役目を果たそうとしている。バニュワンギ県の2015年最低賃金は142万6000ルピアと定められ、バリ州各県の162万2000ルピア〜190万5000ルピアを下回る。実際、バニュワンギからバリ島へ多くの職工が家具製造などに出かけていたが、今後は地元で働くことが期待される。
合わせて、バリ島からの観光客の誘致も図ろうとしている。コーヒーや果物などの体験型観光農園やアグロリゾート構想などがあり、国内外の投資家の関心を集めている。古いジャワ文化とバリ文化の混じった独特の文化があり、黒魔術のような神秘主義の要素も色濃く残る。バニュワンギ県は年間イベントカレンダーを毎年発表するが、ほぼ毎月様々な観光イベントが催されている。色鮮やかな衣装に身を包んだバニュワンギ・エスノカーニバルは盛大に開催されるほか、全身を真っ黒に塗った男たちが水牛の形相で練り歩いて収穫を祝うケボケボアンという伝統的な奇祭もある。
バニュワンギは、バリ島との間が深い海底で区切られるため、ジャワ島では珍しい水深18メートルのコンテナ港の建設が計画されている(スラバヤのタンジュンペラッ港は水深7メートル)。この港の近くに複数の工業団地開発が予定され、2015年中にマスタープランを完成させ、2017年の入居開始を目指す。民間のウォンソレジョ社が開発する約500ヘクタールの工業団地には、すでに小麦粉製粉、食料品、二輪車などの企業が進出の意向を見せている。原材料を外から持ち込み、工業団地で生産して外へ輸出・移出する製造業のほか、製鉄などの重化学工業の進出も想定している。
バニュワンギ県知事は、インドネシアで最も投資しやすい県となることを宣言している。中央政府による全国ブロードバンド化事業の第一号として、他県に先駆けて光ファイバーが敷設された。県統合許認可サービス局は、すでにジャカルタの投資調整庁とオンラインで結ばれ、スムーズな許認可プロセスを実現している。投資家には会議用の部屋を用意し、空港出迎えを行うという熱の入れようである。ここしばらくは、ユニークな開発を目指すバニュワンギから目が離せなさそうである。
(2015年1月31日執筆)