【インドネシア政経ウォッチ】第109回 石油燃料価格値上げをさっそく断行(2014年11月20日)

長期の外遊を終えて帰国したジョコウィ大統領は11月17日夜、石油燃料価格値上げを発表し、18日午前0時から新価格が適用された。石油燃料補助金の付くプレミアム・ガソリンが1リットル当たり6,500ルピアから8,500ルピアへ、同じく補助金付きの軽油が5,500ルピアから7,500ルピアへ引き上げられた。

石油燃料補助金の削減、すなわち石油燃料の値上げは、ユドヨノ前政権のときから慎重に準備が進められ、それを受け入れざるを得ないという世論も十分に形成されてきた。ユドヨノ前大統領は自ら決行しなかったが、前政権のお膳立てなしには新政権発足から1カ月も経たぬうちに実行することはできなかった。

用意は周到だった。あらかじめ、燃料値上げで家計が圧迫される貧困層を対象に「福祉家族カード」「健康なインドネシアカード」「頭の良いインドネシアカード」を配布し、医療・教育面での負担を減らすセーフティーネットを張った。物流や公共交通機関への配慮も施されている。ほとんどは前政権によって準備されてきたものであるが、結果的に、「決断力のあるジョコウィ」というイメージづくりに貢献することになった。

振り返ると、ジョコウィの与党・闘争民主党(PDIP)は、ユドヨノ前政権の石油燃料価格値上げ方針に一貫して反対してきた。国際石油市況が軟化しているのになぜ値上げするのか、という批判もある。党内の一部の政治家は今回の値上げにも反対しているが、党としては黙認の姿勢である。ちなみに、ジョコウィと対抗してきたプラボウォは、党首を務めるグリンドラ党とは逆に、今回の値上げを強く支持している。

ジョコウィは同時に、石油燃料に絡む汚職や不正取引を行っているとされる「石油マフィア」の撲滅を目指す特別チームを結成し、この問題に以前から警告を発してきた著名エコノミストのファイサル・バスリ氏をそのトップに起用した。様々な「マフィア」に宣戦布告したジョコウィ政権の本気度がさっそく試されることになる。