【インドネシア政経ウォッチ】第37回 外国銀行の台頭と特殊銀行論(2013年 5月 2日)
ここ数年、インドネシア国内では外国銀行の台頭への警戒論が出ている。中央銀行は昨年11月、資産5兆ルピア(約500億円)以下の外国銀行支店は資本追加または事業縮小のいずれかを選択することや、外国銀行支店は3年以内にインドネシア法人とすることなどを含む新政策を発表した。今年3月には、次期中銀総裁のアグス蔵相が「外資系合弁銀行のトップにはインドネシア人が就くべき」と発言した。これらの動きを、ナショナリズムの影響が濃くなっていると過敏に受けとめる向きもある。
しかし、中銀が外国銀行の台頭を真に深刻に考えている様子はない。4月25日開催の「外国支配が進む中での特殊銀行の可能性と挑戦」と題したセミナーで、中銀のムルヤ・シレガル研究開発部長は、外国銀行のシェアが貸付で33%、資産で37%、預金で36%、中核資本金で42%とのデータを掲げ、「外国銀行支配という状況にはまだ遠い」との認識を示した。
外国銀行の台頭に危機感を感じているのは、競争相手となる一部の国内銀行である。同セミナーに出席したシギット・プラモノ全国銀行協会会長は、中小企業向け、農業向けなど、産業別に特化した特殊銀行を設立する必要性を強調した。そこには、特殊銀行を活用しながら経済成長を進めた中国のやり方をインドネシアも見習うべきとの考えがある。
実際、1980年代の金融自由化以前は、たとえばバンク・ラクヤット・インドネシア(BRI)は中小企業向け、バンク・ダガン・ヌガラ(BDN)は商業向け、というふうに各国立銀行には対象産業が想定されていた。金融自由化後にそれが崩れ、複数の国立銀行が合併してマンディリ銀行が誕生するに至った。それが今、外国銀行の台頭をきっかけに特殊銀行待望論が現れてきた。
特殊銀行設立に中銀は否定的である。全セクターを対象とすることで、銀行は特定産業におけるリスクを回避し、競争力を高めてきたからである。アグス新中銀総裁も、現実的な対応を継続すると見られる。
http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20130502idr025A
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