【スラバヤの風-09】東ジャワ州知事選挙と今後の政治
スラバヤは、インドネシアの政治を占うバロメーターといわれる。1945年8月17日の独立宣言の後、連合軍(英国軍)が進駐してきた際、それへ最初に抵抗したのが、同年11月10日にスラバヤで起こった市民蜂起だった。これをきっかけに、連合軍への抵抗闘争が全国へ拡大し、独立戦争が本格化した。それ以後、多くの国内政治ウォッチャーが、スラバヤで何が起こるのかに注目してきた。
その観点からすると、8月29日に投票が行われた東ジャワ州知事選挙の結果が今後のインドネシアの総選挙や大統領選挙へどんな影響を与えるかが注目される。開票結果はまだ未確定だが、クイックカウントによれば、スカルウォ=サイフラー(現正副州知事)の現職ペアが勝利を収めるのは確実である。
現職ペアは、与党民主党など30政党以上の推薦を受けただけでなく、東ジャワ社会に大きな影響力を持つ国内最大のイスラム社会団体ナフダトゥール・ウラマ(NU)の高僧(ウラマー)の支持も取り付け、万全な体制で選挙戦へ臨んだ。
ここで、筆者は、政党間の駆け引きよりも、現職ペアが作り上げてきた政治の中身に注目したい。もともと、現職ペアは1期目に致命的な問題を起こさず、調整型の行政運営を通じて明白な政敵も作らなかった。筆者が会った州政府高官たちは、「誰が州知事になってもシステムとして行政は回る」と自信を持って答えた。以前の「選挙があると行政がほぼストップしてしまう」という感覚はもはやない。
スカルウォ州知事は元州官房長という官僚出身者で、自分が前面に出て指導力を発揮し、部下をぐいぐい引っ張るタイプではない。組織のタテ割りの弊害を防ぐために部局長間の相互人事を進め、各部局間の意思疎通を円滑化するなど、見えないところで様々な工夫を施してきた。その結果、2012年の地方政府運営パフォーマンス評価において、東ジャワ州政府が全国第1位に選ばれるなど、着実に実績を積み上げてきた。
地方行政改善のためには、「王様型からマネージャー型へ」という地方首長の態度変化が求められるが、東ジャワ州はそれを先取りしている。大変な親日家としても知られるスカルウォ州知事の2期目がその中身をさらにどう進化させていくのか。
政治の中身に注目するという意味で、東ジャワ州知事選挙とその後の行政運営は、たしかに、大統領選挙とその後の国政のバロメーターになるかもしれない。
(2013年9月6日執筆)