【インドネシア政経ウォッチ】第135回 タンジュンプリオク港での貨物滞留問題(2015年8月13日)
現政権の政策課題の一つが物流改善である。なかでも、ジャカルタのタンジュンプリオク港での貨物滞留時間をどう短縮するかが重要課題と位置付けられている。
6月半ば、ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)大統領はタンジュンプリオク港をアポなしで訪問し、「滞留時間が長すぎる」として、同港を管轄する国営港湾運営会社プラブハン・インドネシア(ペリンド)2の幹部を叱責した。滞留時間自体は、今年2月に8~9日だ ったのが 5.5 日へ短縮したが、目標の4.7日を達成していないためである。ジョコウィ大統領によれば、滞留時間長期化による経済損失は年約740 兆ルピア(約72 兆円)に達する。
なぜ滞留時間が長くなるのか。政府側も企業側も双方に原因をなすりつけている。政府側の税関は、企業側の書類不備により、通関前手続が目標の2.7日を超える3.6日となっていることを理由に挙げる。また、港内での貨物保管費用が外部倉庫利用よりも廉価のため、輸入業者の43%が港内に貨物をわざと滞留させているという。
商業省は、タンジュンプリオク港内での貨物保管を禁止することを検討し始めた。一方企業側は、ペリンド2が新設したタンジュンプリオク港のクレーンが中国製で不良品のため、搬出入効率が低下したと主張する。さらに、同型クレーン利用の義務付けが事業競争監視委員会(KPPU)から独占禁止法違反とされて50億ルピアの罰金が課されたほか、クレーン購入に関する汚職疑惑があり、汚職撲滅委員会(KPK)の捜査対象となった。
通関手続や書類作成には、18省庁・政府機関による114 種類の許認可が存在する。ここで迅速に済ませるため不法行為が起こりやすくなる。先週、国家警察は、輸入割当(クオータ)偽装と贈賄容疑で国内最大の塩輸入業者を逮捕するとともに、収賄・資金洗浄容疑で 商業省貿易総局らを逮捕した。警察は他省庁・政府機関からも逮捕者が出るとみている。
タンジュンプリオク港での貨物滞留問題には、政府側と企業側の双方の思惑が複雑に絡み合っている。ジョコウィ政権が抜本的な改革へ切り込めるかどうか注目される。
(2015年8月5日執筆)