西インドネシア時間6月22日午前零時、政府は満を持して石油燃料を値上げした。ガソリンは1リットル当たり4,500ルピア(約44円)から6,500ルピアへ、軽油は同じく5,500ルピアへ、全国一律の引き上げである。すぐに、各地の公共交通料金が15%程度値上げされた。
今回の石油燃料値上げは用意周到だった。まず、値上げの影響が大きいとされる貧困層1,550万世帯向けに暫定直接補助金(BLSM)9兆3,000億ルピアを配る。1世帯・1カ月当たり15万ルピアを2カ月分ずつまとめて郵便局で受け取る仕組みである。
政府は6月初め、すでにこの貧困層へ社会保障カード(KPS)を配っており、その保持世帯のみにBLSM受給資格を与えた。最終的に、人口の約25%に当たる6,000~6,300万世帯へKPSが発行される予定だが、今回のBLSMの対象は1,550万世帯に限られる。KPS保持世帯は、家の床がタイル張りでない、部屋が狭苦しい、電気使用が微量、世帯収入元が不明確、などの特徴のある世帯である。KPSは個人情報がバーコード化されているので不正しにくいはず、と政府は説明する。
ほかに、貧困層向けにコメの廉価支給プログラム(Raskin)があり、向こう15カ月間、KPS保持世帯へ毎月15キログラムのコメを1キログラム当たり1,600ルピアで販売する。また、貧困学生支援プログラムもあり、KPS保持世帯の小学生へ年間1人45万ルピア、中学生へ同75万ルピア、高校生へ同100万ルピアが奨学金として支給される。対象生徒は1,660万人である。
ユドヨノ大統領が石油燃料値上げをなかなか発表しなかったのは、実は、これらの仕組みの準備に時間がかかっていたためともいえる。実際、KPS保持者情報を受け取っていないとして、末端レベルの村長がBLSMの配布を見合わせるなどの混乱が見られる。それでも、2005年や08年の貧困層向け直接補助金に比べれば上出来という評価である。
14年の大統領選挙を控え、確かに政治的な得点稼ぎの意味はある。しかし、KPS導入は一過性ではなく、今後の国民皆健康保険導入などへつながる動きとしても注目される。
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