【インドネシア政経ウォッチ】第42回 「ずぶ濡れの乾季」の影響(2013年 6月 13日)

インドネシア各地で連日、雨のよく降る日が続いている。気象庁は今月2日、年末までそうした状態が続くとの予報を発表した。

赤道付近の海水温が上昇するラニーニャの影響で、インドネシア海域で大量の水蒸気が発生している。一方、本来ならばそれをアジア大陸方向へ吹き飛ばす役割を果たすオーストラリアからの季節風の吹き出しが弱いため、インドネシア上空は雨雲ができやすい状況にある。降雨量の多い状態が続く可能性もあり、今年は「ずぶ濡れの乾季」になるのが確実である。

「ずぶ濡れの乾季」は、すでに農林水産業へ影響を与え始めている。本来なら受粉期を迎えているにもかかわらず、長引く雨で野菜や果物の花粉が洗い流され、受粉がうまくできない様子である。このため、例年の乾季作と比べて2分の1~3分の1の収量となる見込みのところが出てきた。水産業でも、天候不順で漁に出られない日が続くほか、海水温の変化で本来の漁場で水揚げが振るわない状況も現れている。ただし、米作について、政府は、今のところ昨年並みの作柄が期待できると楽観的な見方をしている。

「ずぶ濡れの乾季」による農林水産業への打撃がどの程度になるかは、今後のインドネシア経済を見ていくうえで重要なポイントになる。インドネシア経済は、国際収支の悪化、外貨準備減少とそれに伴うルピア軟化(6月3日に1米ドル=1万ルピアを突破)で、2013年の国内総生産(GDP)成長率が6.3%へ下方修正され、インフレ懸念も表れている。そこへ経済を下支えしている農業の不振が加わった場合、予想以上に深刻な状況へ陥る危険がある。

それは1997~98年の通貨危機の際、コメなど農業生産の不振が加わって、経済危機、社会危機、政治危機へと展開していった過去を思い出させるからである。「ずぶ濡れの乾季」がインドネシア経済へ悪影響を与えないことを願いつつ、状況を注意深く見守っていきたい。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20130613idr022A

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