【スラバヤの風-22】マラン市のゴミ銀行

「ゴミで貯金しよう」「ゴミで日用必需品を買おう」「ゴミで電気代を払おう」。マラン市のゴミ銀行のオフィスを訪ねると、そんな標語があちこちに掲げられている。

マラン市のゴミ銀行は、ゴミ処理場への家庭ごみの削減を目的に、市政府が2011年10月に設立した。オフィスは市内の墓地管理事務所にあり、オランダ植民地時代には遺体安置所だった。ゴミ銀行とゴミ処理場を同一視した市民が猛反対したため、ゴミ銀行の立地場所を決められず、結局、墓地管理事務所にオフィスを置くことになったのである。

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マラン市の「ゴミ銀行」オフィス窓口

ゴミ銀行で扱う家庭ごみはプラスチック、紙類、金属、ガラス瓶など70種類に分類され、その各々に引取価格が設定されている。ゴミを持ち込んだ顧客は、現金または貯金の形で対価を得るが、貯金のほうが現金よりも高く対価が設定される。たとえば、カップ麺の空カップは現金だと300ルピアだが、貯金だと400ルピアになる。

ゴミ貯金には普通貯金、教育資金用貯金、レバラン用貯金のほか、現金ではなく現物で引き出す日用必需品貯金、奨学金やモスク建設補助のための社会義援貯金、リサイクル関連の設備購入のための環境貯金、健康保険料を支払うための健康保険貯金がある。

ゴミ銀行の顧客には、直接ゴミを持ち込む個人顧客と、ゴミ銀行が出向いてゴミを引き取るグループ顧客の2つがある。グループ顧客には町内会、学校、パサール(市場)などがあり、それぞれ最低でも住民20人、生徒40人、商人5人の会員で構成する。

グループ顧客は1〜2週間に1回、重量50キロ以上になるようにゴミを収集し、計量・分類する。そこへゴミ銀行の職員が出向いて再度計量・分類し、梱包した後、軽トラックでゴミ銀行へ運ぶ。収集したゴミの内訳・重量・預金額などはゴミ銀行で集計・記録し、グループ顧客の通帳にも口座情報として細かに記録される。現在までに個人顧客が約400人、グループ顧客が約320グループ、うち参加学校は175校である。

ゴミ銀行の収益は、収集したゴミを廃品回収業者へ売ることで得られる。現在、毎月2億ルピア程度の売り上げと2000万ルピア程度の収益がある。マラン市のゴミ銀行の1日当たりの収集量は約2.5トンで、市全体から見ればまだごくわずかであり、家庭ごみ処理に関する市民への啓蒙の役割を果たす段階といってよい。

しかし、ゴミをお金に変える試みは珍しく、マラン市のゴミ銀行の動きは全国の地方政府から注目を集めていくことだろう。

 

(2014年3月28日執筆)

 

 

【インドネシア政経ウォッチ】第37回 外国銀行の台頭と特殊銀行論(2013年 5月 2日)

ここ数年、インドネシア国内では外国銀行の台頭への警戒論が出ている。中央銀行は昨年11月、資産5兆ルピア(約500億円)以下の外国銀行支店は資本追加または事業縮小のいずれかを選択することや、外国銀行支店は3年以内にインドネシア法人とすることなどを含む新政策を発表した。今年3月には、次期中銀総裁のアグス蔵相が「外資系合弁銀行のトップにはインドネシア人が就くべき」と発言した。これらの動きを、ナショナリズムの影響が濃くなっていると過敏に受けとめる向きもある。

しかし、中銀が外国銀行の台頭を真に深刻に考えている様子はない。4月25日開催の「外国支配が進む中での特殊銀行の可能性と挑戦」と題したセミナーで、中銀のムルヤ・シレガル研究開発部長は、外国銀行のシェアが貸付で33%、資産で37%、預金で36%、中核資本金で42%とのデータを掲げ、「外国銀行支配という状況にはまだ遠い」との認識を示した。

外国銀行の台頭に危機感を感じているのは、競争相手となる一部の国内銀行である。同セミナーに出席したシギット・プラモノ全国銀行協会会長は、中小企業向け、農業向けなど、産業別に特化した特殊銀行を設立する必要性を強調した。そこには、特殊銀行を活用しながら経済成長を進めた中国のやり方をインドネシアも見習うべきとの考えがある。

実際、1980年代の金融自由化以前は、たとえばバンク・ラクヤット・インドネシア(BRI)は中小企業向け、バンク・ダガン・ヌガラ(BDN)は商業向け、というふうに各国立銀行には対象産業が想定されていた。金融自由化後にそれが崩れ、複数の国立銀行が合併してマンディリ銀行が誕生するに至った。それが今、外国銀行の台頭をきっかけに特殊銀行待望論が現れてきた。

特殊銀行設立に中銀は否定的である。全セクターを対象とすることで、銀行は特定産業におけるリスクを回避し、競争力を高めてきたからである。アグス新中銀総裁も、現実的な対応を継続すると見られる。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20130502idr025A

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