【インドネシア政経ウォッチ】第18回 汚職疑惑で現職閣僚が初辞任(2012年 12月 13日)

汚職が激しいといわれるインドネシアで、ついに現職閣僚が汚職事件の容疑者にされ、辞任する事態となった。今月7日、アンディ・マラランゲン国務相(青年スポーツ担当)の辞任記者会見は、インドネシア人の多くに驚きをもって受け取られた。

青年スポーツ省管轄のハンバラン総合スポーツ施設事業で汚職疑惑が持ち上がり、当初からアンディ国務相の関与をうかがわせる情報が流れていた。汚職撲滅委員会(KPK)は彼を容疑者に断定し、国外逃亡を防ぐために出国禁止措置を採った。インドネシアの歴史上、閣僚が現職のまま汚職容疑者になったのも、汚職疑惑が原因で辞任するのも今回が初めてのことである。

政治家の汚職疑惑はもはや日常茶飯事といってもよいが、これまで辞任する者はいなかった。辞任すれば、汚職疑惑を認めたと見なされるからであろう。疑惑を無視し、じっと耐え、騒ぎが収まるころ、何事もなかったように地方首長選挙に立候補する。そういう者が少なくない。「何かあれば腹切り(辞任)する日本の政治家を見習え」という批判をよく聞いたものだ。アンディ氏は日本の政治家を見習ったかもしれないが、自分の身の潔白は強く主張した。

アンディ氏は南スラウェシが本拠のブギス族出身である。ブギス族は白黒はっきり、直球勝負という性格で知られる。今回の彼の辞任を「潔い」と前向きに評する者もいる。彼の汚職容疑を断定したアブラハム・サマッドKPK長官も、ブギス族出身の人権活動家である。両者はおそらく、若いころは同志のような関係だったに違いない。ただ、かつてのアンディ氏の「同志」でもある私の友人のひとりは、政治家になったアンディ氏が、若い頃と比べてすっかり変わってしまったことを嘆いていた。

アンディ氏は民主党幹部でもあり、大統領候補のひとりでもあったが、今回の件でその芽はなくなった。1998年のスハルト政権崩壊後、新しいインドネシアを作る意欲に燃えていたころの彼を知る身としては、寂しさを感じる残念な辞任劇であった。

 

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