【インドネシア政経ウォッチ】第25回 「純潔」を守れなかったイスラム政党(2013年 2月 7日)

1月31日、福祉正義党(PKS)のルトゥフィ・ハサン・イサック党首が汚職撲滅委員会(KPK)に逮捕された。牛肉輸入枠の設定に関連して、国会議員である同党首が便宜を図り、特定業者が有利になるよう具申した見返りに金銭を受け取ろうとした収賄の疑いである。KPKは、輸入業者のインドグナ・ウタマ社の重役2名が同党首に近いアフマド・ファタナ氏に現金10億ルピア(約950万円)を手渡したことを突き止め、これがルトゥフィ党首へわたると見て収賄罪を適用したのである。

福祉正義党といえば、政党カラーは白で、汚職に対して最も厳しい「純潔」の政党として勢力を伸ばしてきた経緯がある。「イスラムの教えを正しく教え広める役割を担う政党」を標榜し、学生や若者を中心に支持層を広げてきた。汚職まみれの既存政治とは一線を画す「希望の星」として、国の将来を担う彼らの期待を集めてきたのである。

イスラムには、汚職の対極にある「清潔」のイメージがある。2000年代前半、「汚職をなくすには、イスラム法に基づく国家を目指すしかない」という気運が高まり、イスラム法適用運動が脚光を浴びた。地方レベルでイスラム法に基づく地方政令が連発され、イスラム政党は支持を伸ばした。その一躍を担っていたのが福祉正義党(あるいはその前身の正義党)であった。同時に、それは「インドネシアがイスラム国家になるのではないか」と欧米諸国が危惧(きぐ)した時期でもあった。04年のバリ島爆弾テロ事件はその最中に起こり、治安当局は、テロ対策の名の下に、イスラム強硬グループの摘発に躍起となった。

あれから約10年、イスラム法適用運動は下火となり、イスラム強硬グループは力を失い、イスラム政党は国民の支持を減らした。イスラム政党の国会議員も汚職に関与し、今や最後の砦(とりで)と見られた福祉正義党の党首が汚職で逮捕された。イスラムの「純潔」イメージはすでに政治の世界で守れず、イスラム政党がインドネシアで政治的に力を持つ可能性はなくなった。

 

http://news.nna.jp/cgi-bin/asia/asia_kijidsp.cgi?id=20130207idr020A

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