【インドネシア政経ウォッチ】第32回 ユドヨノ大統領の不安(2013年 3月 28日)

3月25日に予定された大規模デモは、結局、警察に許可を申請せぬまま、前日までに中止となった。もっとも、当日は学生ら約百人がホテル・インドネシア前ロータリーでデモを行ったが、混乱は起きなかった。

だが、今回の治安部隊の警戒ぶりは、従来に比べても異様なほど厳重だった。ホテル・インドネシア前ロータリーには多数の警察官が配置され、サリナ・デパート裏には自動小銃を持った兵士と国軍トラックが待機した。デモ対策は通常警察が行うのだが、軍が出動態勢を敷くのは異例といってよい。最初から「大した事態にはならない」と分かっていたはずなのに、なぜ政府は、軍まで待機させて仰々しい警備体制を敷いたのだろうか。

先週から、ちまたでは「ユドヨノ政権転覆を狙う勢力が動きそう」「クーデター?」といったうわさが流れていた。ユドヨノ自身も政府関係者もこうした言葉は使っておらず、記者会見でマスコミが使った言葉が流れたようだ。それでもユドヨノは、次期大統領候補であるグリンドラ党のプラボウォ・スビヤント党首(国軍士官学校でユドヨノと同じ1973年卒)や退役軍人7人を相次いで大統領官邸へ招き、反政府的な動きへ同調しないよう暗に求めたようである。ユドヨノ自身、明らかに政治的動揺を隠せていない様子がうかがえる。

与党民主党の支持率が下がり、党体制立て直しのためにユドヨノ自身が前面に出て、汚職容疑のアナス党首を辞任させる措置を取ったが、民主党の支持率は上昇する気配がない。いったん不安に駆られると不安が増長し、必要以上に自分の周りを警戒する。国家官房の火事でさえ、何かの陰謀ではないかと勘繰る。常に人気動向を気にしてきたユドヨノがそんな心理状態に陥っている可能性がある。

今回の過剰とも思えるデモへの対応は、こうしたユドヨノ大統領の不安の表れである一方、政権転覆やクーデターなどを絶対に起こさせないという、ユドヨノの毅然(きぜん)たる態度を社会に印象付ける意味もあった。

 

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