【インドネシア政経ウォッチ】第105回 ユドヨノの10年を振り返る(2014年10月23日)

10月20日、ジョコウィ新大統領とユスフ・カラ新副大統領が正式に就任した。大統領選挙で敗北し、リベンジに燃えていたプラボウォも就任式に出席し、新政権への賛意を示した。プラボウォとともに動いたゴルカル党のアブリザル・バクリ党首も、新政権に協力する姿勢を示し、まずは丸く収まる形で新政権がスタートできた。

来る者がいれば去る者もいる。2期10年にわたって政権を担当してきたユドヨノ前大統領は、インドネシアでは初めて円満な政権交代を果たした大統領となった。大統領官邸での新旧交代式は、去る者から来る者への期待、来る者から去る者への感謝が現れた温かいものだった。今後、これが政権交代の新しい伝統となることが期待される。

ユドヨノの10年は、インドネシアが民主国家として経済発展を進めていく基礎の固まった時期であった。権力者の一存で物事を決めず、誰もが法規を順守し、時間がかかっても所定の手続きを経ることを定着させた。テロや暴動を抑え、安心して経済活動のできる環境が整えられた。そして、一国の利益を追求するだけでなく、国際貢献をも果たそうとし始めた。人間に例えれば、10年で大人の仲間入りを果たしたともいえようか。

「なかなか決められない」というのがユドヨノに対する批判であった。しかし、もしかすると、聡明なユドヨノは熟考に熟考を重ねていたのかもしれないし、自分はこうしたいと思っていてもじっと待っていたのかもしれない。民主国家としての基礎の定着には、寛容や忍耐、「待つ」という時間もある程度必要だった。

改革派軍人だったユドヨノは、スハルト政権崩壊後、自らが新しい民主国家づくりに参画する意志をもって、2001年に民主党という政党を設立し、それを「乗り物」として大統領に就いた。彼自身には大統領の任期10年を全うしたという感慨があるだろう。しかし、10年経っても、自分を大統領へと導いた民主党が自立できなかったことが心残りのはずである。

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