地方首長選挙はジャカルタだけではないが・・・

インドネシアでは、ジョコ・ウィドド大統領の一声で、今日、2月15日は全国で休日となりました。

そう、今日は、ジャカルタ首都特別州の正副州知事選挙の投票日。だからって、全国も休みになるのかあ、と思った方は間違いです。なぜなら、地方首長選挙はジャカルタだけで行われているわけではないからです。
7州の正副州知事、76県の正副県知事、18市の正副市長、合わせて全国で101の地方首長選挙の投票日なのです。ジャカルタはその一つにすぎません。選挙費用がかかってしまうので、できるだけ統一して行うようになったのです。
大統領から州知事、県知事・市長に至るまで、インドネシアでは、正・副のペアで立候補し、有権者が意中の候補ペアを直接投票で選ぶ、という方法を採っています。この方法を採ることで、人口の拮抗するような種族、宗教、出身地盤などを基にした対立を回避し、これまで、(地域)社会の分断を少なくするような作用が果たされてきました。
たとえば、イスラム教徒とキリスト教徒の人口が拮抗しているところでは、首長候補がイスラム教徒ならば、副首長候補をキリスト教徒として、両者がペアを組むというのが一般的です。このため、種族対立や宗教対立が選挙運動で起こりにくい構造となっています。
かといって、候補ペア同士が細かな政策論争を繰り広げるという要素も少なく、最終的には、その土地の有力者や名士の一族かどうか、資金力があって選挙戦を十分戦えるかどうか、などが投票に影響を与えます。
選挙には金がかかります。その資金を作るために、候補ペアは自分の資産や財産を売却したり、多額の借金を作ったりますので、もし選挙で負けると、借金の返済に苦しむだけでなく、一気に貧困にあえぐ状態に陥る可能性もあります。実際、選挙で負けて、精神的におかしくなってしまう者もいると聞いたことがあります。
資金を作るのは勝者も同じで、だから首長は任期中に当選前の「投資資金」を回収するのに忙しく、汚職への動機がどうしても生まれてしまうとも聞きます。
インドネシアにも政党はありますが、地方首長選挙では、まず有力者がいて、彼がどの政党の神輿の上に乗るか、という力関係になります。すなわち、政党が地方首長をて下にするのではなく、政党が次回総選挙を有利に進めるために、どの勝ち馬に乗るか、という形になります。ですから、1期目と2期目で与党が異なるという事態が一般的になります。
ということで、101の地方首長選挙は地元の方々にとっては大変重要なものであり、私も幾つかの地方首長選挙の結果が個人的に気になっています。ジャカルタ首都特別州知事選挙もそうした選挙の一つにすぎないのです。
日本でジャカルタ首都特別州知事選挙が注目されるのは、それを取材する日本のメディアが皆ジャカルタにおり、他の100の地方首長選挙を取材する余力がない、という物理的な理由もあります。ジャカルタだけがインドネシアではない、ジャカルタがインドネシアを代表するわけでもない、と私は何度も声を大にしてきました。
しかしながら、やはりジャカルタ首都特別州知事選挙は、他の地方首長選挙よりも重要な意味を持つものとなってしまいました。なぜならば、今のジョコ・ウィドド大統領がジャカルタ首都特別州知事から大統領へ就任したことで、ジャカルタ首都特別州知事ポストが次期大統領へ向けての重要ポストとなってしまったのです。

そのような文脈で、今回、現職のアホック知事(華人・キリスト教徒)が再選されるかどうかが注目されるに至ったわけです。

今回のジャカルタ首都特別州知事選挙の持つ意味は何か、この選挙の裏で起こっている重要な動きとは何か、イスラム関係者の動きや数万人を動員したデモはどのような意味を持つのか。そういった話は、このゆる〜いブログではなく、別のところで、私なりの考えを述べてみたいと思っています。お楽しみに。

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